研究課題/領域番号 |
20K20445
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
花田 和明 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (30222219)
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研究分担者 |
胡 長洪 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (20274532)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 液体金属 / 楊液体金属発電 / MHDドラッグ |
研究実績の概要 |
液体金属を用いて揚水発電のような電力供給の時間変動や日変動を緩和させる楊液体金属発電の原理実証とエネルギー収支の評価を行うことを目的とする。液体金属は比重が大きいため、楊水発電よりも小型化が可能で、直接電気出力が取り出せるためタービンが必要なくゼロ出力からの立ち上がりが早いため工場等の大電力を消費する設備の停電対策としての活用が考えられる。 まず最初のステップとして液体金属の流動ループを作成し、磁場中での液体金属の磁場中での挙動を調べている。令和元年度は、傾斜したスロープを流れる液体金属に磁場をかけて電磁流体(MHD)効果による流速の減衰(MHDドラッグ)と磁場に沿った流れの発生を示す実験結果を得た。この結果から磁場が0.7T程度で有意なMHDドラッグを起こす起電力が得られていることが判明したが、流動させる液体金属の量が十分ではなく、また大気中で行ったために表面に酸化膜が発生する等実験の再現性が良くないため、定量的なデータの取得が困難であった。 令和2年度は液体金属の閉ループを作り、表面の酸化膜の発生を押さえるためアルゴンガス雰囲気で実験を行うこととした。このための流動ポンプの選定を行い、ダイヤフラムポンプを選定して流動試験を実施した。結果として流速の定量測定には至っていないが、流速調整も容易で、令和元年度に実験を行った場合と同程度以上の流速が安定に得られることが判った。この結果から次年度以降、発電量を定量評価するための環境が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体金属を流動するためのポンプとしてダイアフラムポンプを選定し、流動試験を実施した。これまでは液体金属表面に生成する酸化膜のために観測された流動に対する酸化膜の影響が無視できない状況であったが、ループ自体をパイプで製作し、内部に酸化防止のためのアルゴンを注入して流動試験を行ったところ、酸化膜の影響は大部分除去できることが判明した。ポンプは印加電圧を変えることで流速を自在に変更できる点や必要とされる流速は確保できることが判ったため、次年度の購入する方向で進める。ポンプ駆動閉ループが完成の目途が立ったことで、実験の再現性の確保やシミュレーションとの比較が可能なデータの取得ができるようになる。 一方、シミュレーション研究は着実に進展しており、自由表面でのCFD計算が可能となり、さらに大規模な機器に適用できるようなコードの改良を行っている。この改良により基礎研究の結果から大型機器までのシミュレーションを行うことが可能となり、基礎実験結果とのベンチマークを行うことで大型機器での予想が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
閉ループに用いるダイアフラムポンプが選定できたこととその試験が完了したことで、アルゴン雰囲気で流動実験が可能となる。令和3年度前半で閉ループを完成させ、酸化膜の影響がない状態での流動実験を行い、MHDドラッグの定量化や発電量の計測、また、シミュレーションと実験とのベンチマークによるコードの改良を行い、シミュレーションコードを完成させる。コードの結果から大型実験装置による発電量の評価を行う。基礎実験による検証は常温で液体のGaInSnを用いるが、将来の普及に向けて使用する液体金属は安価で低融点(231℃)の液化錫なので、予想される違いについてもコードによる計算で事前に検討する。またコードによる最適化を行った後で大型の実験装置を設計し、実験を行う。基礎実験で使用しているGaInSnは常温で液体なので基礎実験には適しているが、将来の普及に向けて使用する液体金属は安価で低融点(231℃)の液化錫(抵抗率1.3×10-7 Ωm、動粘度0.13mm2/s、比重7.0g/cc)となる。発電量の評価はGaInSnで行い、液体錫との違いを評価する。 今後の実施計画は以下の通りである。流動ループに電磁石を設置し発電部の試験を行う。数値シミュレーションを実施して計測結果との比較を行い開発された数値計算手法の精度を検証する。中床を製作し配管を延長して流速を上げて得られる電流の変化を確認する実験を行う。また、実験に対応するシミュレーションを行い、乱流起電力の大きさの再現を検証する。床の高さをあげて、発電装置として性能を評価する実験を開始し、対応する計算機シミュレーションも実施する。発電装置としての最適化や定量化を行う。必要な発電量を得るのに必要な液化錫の量・温度や流速を最適化し、発電効率の評価とエネルギー収支シミュレーションとの協働によって実用化への見通しを得る
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、前半に計画していた基礎実験の再現性向上に向けたポンプによる流動ループの試験が、後半にずれ込んだため関連する機材の購入時期が2021年度にずれ込んだ。このため、経費の使用が2021年度に変更されたことによる。2021年度前半に必要機材の購入ができれば年次計画に変更の必要はない。、
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