研究課題/領域番号 |
19H05527
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 正明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60181319)
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研究分担者 |
宮崎 充彦 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特定准教授 (00378598)
石内 俊一 東京工業大学, 理学院, 教授 (40338257)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 天然変性タンパク質 / レーザー分光 / 赤外分光 / 冷却イオントラップ / 質量分析 / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の装置の改造を進めた。 1)四重極質量分析器の追加 冷却イオントラップに目的イオンを導入する前に別の温度可変イオントラップ(反応トラップ)に導入し,イオンの温度調整や種々の複合体イオンの生成を行なっている。その後に,そこから目的のイオンを四重極質量分析器で取り出して,単一のイオン種を冷却イオントラップに導き分光測定を行う。この方法では,エレクトロスプレーで生成したイオン全てが反応トラップに導入されるため,目的外の複合体生成などにより,目的イオンの収量が減少する問題があった。そこで,反応とラップの全段ににも四重極質量分析器を設置し,エレクトロスプレーで生成したイオンから目的のイオンのみを反応トラップに導入できる様にした。 2)エレクトロスプレーの改造 エレクトロスプレーでのイオン収率を上げるために,イオンファネルという装置を設置しているが,その周りの圧力は流体力学的な効果によりイオン収率に大きく影響する。これまで用いてきた排気ポンプの排気速度を変えたときに,イオン収量がどの様に変化するかを調べたところ,排気速度をあげた方がイオン収量が上がることが分かったため,従来のものより排気速度が倍のポンプを導入することとした。 また,エレクトロスプレーそのもののイオン収量を上げるために,より先端が細くなったエレクトロスプレーエミッター(ナノスプレー)を導入し,イオン生成効率の向上を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エレクトロスプレーの改造が順調に進捗しており,イオン検出感度の大幅な向上が達成できた。質量分析装置の追加導入に関しても,いくつかの問題点もあったが,種々の工夫によりそれらを克服し,問題なく達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)YEMPS-ドーパミン複合体の冷却イオントラップ赤外分光 天然変性タンパク質であるα-シヌクレインのドーパミン結合部位であるYEMPS配列の部分ペプチドAc-YEMPS-NHMe(以降YEMPS)とプロトン付加ドーパミンの複 合体をエレクトロスプレーで気相中に取り出し,冷却イオントラップ中で極低温下で赤外スペクトルを測定する。α-シヌクレインではドーパミンのカテコール OH基がYEMPSと結合することが知られているが,プロトン付加ドーパミンではプロトン化されたアミノ基がYEMPSと優先的に結合することが予想されるため,それを避けるた めに,18C6クラウンエーテルでプロトン化アミノ基を包接保護し,YEMPSとカテコールOH基が結合した構造を形成させる。YEMPSの2 次構造を明らかにするために,ペプチド結合のC=O伸縮振動(amide-I)を測定する。 2)理論計算による構造帰属 1)で観測された赤外スペクトルを再現する構造を理論計算を用いて探索する。いきなり全系を計算するのはコストがかかるため,まずはカテコールとYEMPSの複合体の構造を検討する。力場計算により種々の初期構造を得て,DFT計算により構造最適化を行う。カテコールをプロトン付加ドーパミン-クラウンエーテル複合体に置き換えて,DFT計算による構造最適化と赤外スペクトル計算を行ない,実測の赤外スペクトルと比較することで,観測された構造を帰属する。
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