研究課題
一方のケイ素上のみにかさ高い置換基(R)を有する非対称置換ハロジシランの還元は、縮合反応による多量化(クラスター化)を許容する一方で、生成物に対する速度論的安定化が期待でき、多様な不飽和ケイ素クラスター形成につながると考えている。前年度までに、種々の置換様式を有するハロジシランの合成に成功し、還元的縮合反応を検討した。その中で、ペンタブロモジシランの還元により種々の新規な不飽和ケイ素クラスター群が形成することを見いだした。中でも[Si6R3]-の組成を持つ五角錐型クラスターにおいては、理論、実験両面における考察から、複数のσ結合とπ結合からなる6電子が非局在化した3次元芳香族性の発現が示唆されるなど、特異な電子構造を有していることが明らかとなった。また二つの3員環が連結した構造を有するヘキサシラベンゼン(Si6R6)の異性体の生成も確認している。今年度は、かさ高い置換基の変更による生成物および中間体の溶解性の変化に伴う新たなクラスターの生成を指向して検討を行った。その結果、前述の五角錐型クラスターに加えて、新たにアニオン性ケイ素7核クラスターの単離に成功し、その性質の解明を行った。7核クラスターにおいても、クラスター骨格全体における電子の非局在化が示唆された。また五角錐型ケイ素6核クラスターの反応性を検証し、クロロシランとの反応において、大きな骨格変化を伴ってSi6R4クラスターが定量的に生成することを見いだした。
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