研究課題/領域番号 |
20K20451
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 守俊 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00323501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光操作 / ゲノム / 細胞 |
研究実績の概要 |
研究代表者は現在まで,生命現象の光操作を実現する基盤技術として,青色光でタンパク質間相互作用を制御できる光スイッチタンパク質を開発し,これを用いて様々なゲノムの光操作技術を開発してきたが,いずれも生体組織透過性が低い青色光を使って光操作を行う必要があるため,生体外からの光照射で操作可能な部位は皮膚や筋肉,肝臓の腹側など,生体表面から近い組織・器官に限定されることが明らかになっている.このような技術的な課題を克服して,生体外からの非侵襲的な光照射により,青色光を用いた光操作技術では困難だった生体深部(臓器の内部や骨の 中の骨髄,頭蓋骨に覆われた脳など)でゲノムの光操作を著しく高い効率で実現できるようになればそのインパクトは計り知れない.このような背景のもと,本研究では,生体組織透過性の高い長波長の光照射で活性化できるゲノムの光操作技術を開発している.2021年度は,前年度に引き続いて,光スイッチタンパク質の改良研究を行った.光合成細菌が有するBphP1は,ビリベルジン(BV)を補因子とする光受容体タンパク質であり,PpsR2タンパク質との結合・解離を,近赤外光(~760 nm)と遠赤色光(~650 nm)でそれぞれ制御できることが最近報告されたが,研究代 表者の評価の結果,BphP1とPpsR2の親和性は十分だが,当該 システムにはいくつかの大きな問題があることが分かった.2021年度は,前年度に引き続いて,この問題を解決すべく,BphP1とPpsR2への変異導入を行った.その結果,既存の光スイッチタンパク質よりも,リークが大幅に低減した変異体を開発することができた.現在,さらに大規模なアミノ酸変異導入を実施して光スイッチタンパク質の改良を行うとともに,これを用いたゲノムの光操作技術を開発し,マウスレベルでの検証を実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はコア技術となる光スイッチタンパク質の開発に関して大きな進展が見られたが,新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で,技術の評価に関してスムーズに進まない面もあった.研究全体としては,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までに,光スイッチタンパク質の開発に関する研究を大きく前進させることができた.次年度はこれを完成させるとともに,ゲノムの光操作技術の開発と検証へと進んでいきたい,
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により,物品の購入に大きな影響があったため.
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