研究課題/領域番号 |
20K20452
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / ストリゴラクトン / 菌根菌叢 |
研究実績の概要 |
本研究では、非典型的SLを基本骨格とする菌叢組成改変アナログの開発を目指し、A環にベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログの合成、それらのAM菌の菌糸分誘導アッセイおよび複数のAM菌を接種したミヤコグサ根に対してSLアナログを投与するAM菌組成アッセイを行った。まず、ハロゲン原子やアルキル基などを置換基とする種々のパラ置換ベンズアルデヒドを出発物質として、3段階または5段階の反応を経て新規非典型的SLであるA環にパラ置換ベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログを9種類合成した。合成した新規SLアナログ9種類について、AM菌Gigaspora margaritaに対する菌糸分岐誘導活性を評価をした。活性を示す最小有効濃度を調べた結果,ハロゲン原子やメチル基(C1)を置換基とするアナログでは強い菌糸分岐活性を示したのに対し、直鎖ブチル基(C4)を持つアナログでは活性が大きく低下し、直鎖ヘキシル基(C6)や直鎖オクチル基(C8)では活性を示さなかった。これらの結果より、ベンゼン環上の置換基の炭素鎖長を変えることで菌糸分岐活性を容易に調節できることが分かった。次に、3種類のAM菌Rhizophagus irregularis、R. clarus、G. margaritaをに接種したミヤコグサ (Lotus japonicus) 根に合成SLアナログを与え、生育4週間後の根におけるAM菌菌叢組成を調べた。根におけるAM菌の感染率の測定とそれぞれのAM菌のLSUをターゲットとした種特異的プライマーを用いた定量PCRにより根におけるAM菌の存在量を定量した。その結果、野生型とlld変異体では、数種の非典型的SLアナログにおいてp < 0.05を閾値としてR. irregularisが減少し、R. clarusが有意に増加するという菌叢改変効果が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規非典型的合成SLとしてA環にパラ置換ベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログを合成し、置換基のアルキル鎖長を変化させることで、AM菌に対する活性化度(菌糸分岐誘導活性)を調節できることを見出した。さらに、これら新規アナログが、3種のAM菌からなる菌叢組成に対して、有意に特定の菌種の組成比を増減させることのできる作用を示すことを発見することができた。これらはSL合成アナログの外部投与により植物根におけるAM菌の菌叢組成を人為的にコントロールできる可能性を強く示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、3種類のAM菌接種条件で合成SLアナログが菌叢改変効果を示すことを実証することができている。今後は、多種のAM菌が含まれる一般圃場の土壌を接種源として、一般圃場条件下でも合成SLアナログが菌叢改変効果を示すのかどうかを調べることにより、これら合成SLアナログが実用に供するポテンシャルを有するのかを検討していく。また、典型的ストリゴラクトンをリード化合物とした合成アナログの菌叢改変効果についても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
多種類のAM菌の接種実験を行うことにより開発した合成SLアナログが一般圃場条件下でも効果を発揮するかを調べる追加実験を実施することにより、本研究のさらなる精緻化を目指すことにした。また、典型的SLをリード化合物とした新規合成SLアナログの開発にも取り組むことにした。
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