研究課題/領域番号 |
20K20453
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (60344123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低温適応 / リボソーム / Thermus thermophilus |
研究実績の概要 |
本課題では、生物の爆発的な多様化は制御系の進化がもたらしたという史実にヒントを得て、生命システムの根幹をなす制御因子の改変が生物進化に直結すると の仮説を立て、これに基づく生物進化工学を開発する。制御因子のうち、生体内の主たる機能分子であるタンパク質の合成を司るリボソームに着目し、その改変 により生じる表現型の多様化された変異株ライブラリー創出と有用形質を持つ宿主を選抜する方法を確立する。 令和2年度は、昨年度までに獲得したThermus thermophilus 16S rRNA 遺伝子変異体を生育下限の50℃をさらに下回る45℃で継代培養し、低温での増殖が良好な変異株を分離した。1週間程度の培養で十分に飽和に達するレベルにまで増殖が早まっている。予備的な遺伝子解析の結果からは、16S rRNA遺伝子領域には遺伝子変異は見当たらず、ゲノム中のいずれかの領域に変異が発生していると考えられる。これらの株について、次世代シーケンサーによるゲノム解析を行なっている。 さらに、低温適応した上記の株を、再度70℃以上の高温に戻し、高温での生育を回復した株のスクリーニングを行なっている。いくつかの株については70℃で大きく生育を損ねているものもあり、継代培養による復帰株の獲得を目指す。 温度以外の適応という点では、塩濃度の大きく異なる環境に生育しながらゲノム上は類似した株間で相互に形質転換するなどして変異株の取得と適応の分子基盤の解明を目指している。 上記研究の他、高熱環境からの微生物の分離を行うとともに、興味深い株についてゲノム解析などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに樹立したリボソーム変異株を材料に、さらなる低温適応と逆に高温に復帰させる実験を行った。元の生育温度から30℃程度低下した環境でも実験に耐える変異株を得られ、システムとしての適応の分子基盤をゲノム解析により明らかにする準備が整った。 塩濃度適応については、環境変化への順応に時間を要するようで、一度順応後は比較的速やかな生育が見られることが確認された。これらの観察結果を踏まえ、培地を交互に変えながら敏感に環境変化についてくる変異株のスクリーニングを行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
高度好熱菌の適応限界について特に低音への順応に対してゲノムレベルで明らかにする。45℃という温度は当研究室で別途得ている高温適応型の大腸菌のリボソーム変異株と共存できる状態になった。Thermusの特徴である自然形質転換脳などを活用し、(元)好熱菌と常温菌の共存状態での生育競争、遺伝子交換(水平伝播)の観察などについて発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により予定していた旅費利用の一部がキャンセルせざるを得ない状況になったため
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