研究課題/領域番号 |
20K20455
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高須賀 明典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00392902)
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研究分担者 |
渡井 幹雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (50829166)
入路 光雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (50732426)
米田 道夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30450787)
中村 政裕 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (00781832)
亘 真吾 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), グループ長 (00416041)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水産資源学 / 資源管理 / 加入研究 / 卵生産 / 密度効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、野外データ解析・標本分析と飼育実験によって、小型浮魚類複数種を対象として、卵量・卵質に対する種内・種間密度効果を検証する。資源管理への適用のため、卵生産量に基づいた新しい資源管理基準の設定方法を検討し、資源管理リスク評価を行う。加入研究への適用のため、卵生産量に基づいた新しい生残指標値を検討し、その指標値と環境要因の関係から、既存研究の再検証を行う。以上より、従来の産卵親魚量に基づいた資源管理・加入研究に代わって、卵生産量に基づいた新しい資源管理・加入研究の基盤を構築する。2023年度は以下の内容を実施した。 I. 野外データ解析・標本分析 (1) マイワシとカタクチイワシの卵質に対する種内・種間密度効果の検証を進めた。マイワシ主産卵期において、マイワシの卵サイズは資源水準と正の関係にあり、個体当たり卵生産量とのトレードオフ、カタクチイワシの卵サイズはマイワシ資源水準と負の関係にあり、マイワシの影響の可能性が考えられた。一方、カタクチイワシは、主産卵期において、卵サイズに密度効果は見られなかった。マサバとゴマサバについて、卵サイズと水温の負の関係を考慮した新しい種判別法の成果をまとめた。 II. 飼育実験 (1) 産卵親魚の環境と年齢 (産卵経験) が卵質および仔魚の成長に及ぼす影響を調べる飼育実験を進めた。マサバについて、初回産卵魚は、給餌制限を受けた経産卵魚に比べて、卵の熱量が低く、仔魚の成長も遅いことを明らかにした。マイワシについて、年齢によって卵の卵黄径と油球径の関係に対する給餌量の影響が異なることを明らかにし、低年齢群では給餌量によって卵の数と質のトレードオフがあることを見出した。 III. 資源管理・加入研究への適用 (1) 卵生産量と卵密度のデータを更新した。(2)卵生産量に基づいた資源管理・加入研究の方向性の提案に伴って、データベースを更新した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外データ解析・標本分析では、マイワシとカタクチイワシの卵質に対する密度効果の検証のため、新たにカタクチイワシ主産卵期の卵サイズ測定が進んだ。その結果、卵サイズの長期変動の要因に関して魚種間で比較する結果が充実した。マサバとゴマサバの種判別法の公表準備が完了した。飼育実験では、野外データ解析・標本分析での成果を検証するため、マサバとマイワシの密度効果と母性効果の実験を進め、卵質や初期成長への影響に関する理解が進んだ。資源管理・加入研究への適用では、2022年の国際シンポジウムにて、これまでの成果に基づいて将来の資源管理・加入研究の方向性の提案をしており、後続研究を検討中である。全体期間の前半において、新型コロナウイルス感染症の情勢によって国際学会での成果発表やワークショップの一部が累積的に遅延しているが、研究の進捗自体は良好であった。
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今後の研究の推進方策 |
野外データ解析・標本分析では、マイワシとカタクチイワシの卵量・卵質 (卵サイズ) に対する種内・種間密度効果の検証結果をまとめる。環境要因の影響、種内・種間密度効果の他、卵生産と卵サイズのトレードオフ等を総合的に考慮し、魚種特有の卵生産戦略の仮説を提示する。飼育実験では、野外データ解析・標本分析での成果を検証しつつ、資源管理・加入研究への適用で求められる卵量・卵質、初期成長に対する影響の検証結果を整理する。資源管理・加入研究への適用では、資源管理方策への適用を目指した枠組みを検討する。対面・オンラインのワークショップによって、代表者・分担者の共同作業を促進し、国際誌及び国際シンポジウムでの成果公表を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間全体における累積として、国際シンポジウム及びワークショップが延期となったことに伴って、成果のまとめと発表の機会が不足したため。今後、成果発表や国際共同にかかる旅費等として使用予定。
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