研究課題/領域番号 |
19H05554
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 洋人 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (60446549)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 機能ゲノミクス・スクリーニング / 微生物ゲノム / がん治療 / 次世代シーケンス / シングルセル・シーケンス |
研究実績の概要 |
以下3項目の研究計画を進めた。 (1)微生物cDNAをゲノムスケールでレンチウイルス・ライブラリ化:さまざまな微生物ゲノム資源を用いて、その網羅的cDNAを哺乳類細胞で発現可能なレンチウイルス・ライブラリに組み換えて構築した。 (2)微生物cDNAライブラリを用いた機能スクリーニング系の確立:以下4つの研究計画を進めた。(a)さまざまなヒトがん細胞株に対して1細胞に1レンチウイルスが導入されるような感染タイトレーションを確立した。(b)レンチウイルス感染後のヘテロながん細胞集団を免疫不全マウス皮下に移植し、in vivo環境の強烈な選択圧のもとでclonal selectionを起こさせる実験条件を検討した。(c)できあがった腫瘍のゲノムDNAに対する次世代シーケンス・プロトコールを樹立した。(d)in vivo腫瘍を構成するヒトがん細胞集団におけるcDNAレパトアの増減をカウントし、in vivoでクローンの減少・脱落を呈したcDNAクローンを抽出する解析パイプラインを確立した。 (3)スクリーニングからみえた細胞生物学的現象をがん治療に応用するための検証:スクリーニングで抽出された「ヒトがん細胞に細胞死・増殖抑制を起こす微生物cDNA」あるいは「ヒトがん細胞の増殖を活性化する微生物cDNA」などの候補について、それらの微生物cDNAがヒト細胞内のホメオスタシスにどのような揺さぶりをかけ、どのようなメカニズムで細胞死あるいは細胞増殖などを引き起こしているのかの類推を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿った研究を推進することができ、当初の計画通りに概ね順調に進展している。 具体的には、さまざまな微生物cDNAをゲノムスケールでレンチウイルス・ライブラリ化し、ヒト細胞で強制発現可能なライブラリとして構築することができた。また実験条件の検討等によって、それらの微生物cDNAライブラリを用いた機能スクリーニングの系を確立することができた。これまでに、さまざまなヒトがん細胞株について免疫不全マウスを用いた機能ゲノミクス・スクリーニングを進めることができた。スクリーニングからみえてきた細胞生物学的現象をがん治療に応用するための検証実験について検討を進めることができており、次年度以降の研究計画の準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下2項目の研究計画を進める。 (1)微生物cDNAライブラリを用いた機能ゲノミクス・スクリーニング系を実施する:以下の4段階で進める。(A)多様なヒトがん細胞株に対して1細胞に1レンチウイルスが導入されるような感染タイトレーションを確立する。(B)レンチウイルス感染後のヘテロがん細胞集団を免疫不全マウスに移植し、in vivo環境の強烈な選択圧のもとでclonal selectionを起こさせる。(C)できあがった腫瘍のゲノムDNAに対して、ヒトゲノムに導入された微生物cDNAを標的とした次世代シーケンス法を用いることで、in vivo腫瘍を構成するヒトがん細胞集団におけるcDNAレパトアの増減をカウントし、in vivoにおいてクローンの減少・脱落あるいは増加を呈したcDNAクローンを抽出する。(D) 上記の(A)~(C)と併せて、cDNAウイルスを導入したヘテロ細胞群におけるシングルセル・トランスクリプトーム解析を行い、微生物cDNAがヒト細胞内で引き起こすシグナル変動を1細胞レベルの解像度で詳細に解析する。 (2)スクリーニングからみえた細胞生物学的現象を新規がん治療標的として応用するための検証実験を進める:スクリーニングで抽出された「ヒトがん細胞に細胞死・増殖抑制を起こす微生物cDNA」あるいは逆に「ヒトがん細胞の増殖を活性化する微生物cDNA」などの候補について、それらの微生物cDNAがヒト細胞内のホメオスタシスにどのような揺さぶりをかけ、どのような分子メカニズムで細胞死や増殖抑制などを引き起こしているのかについて類推し、実験的に検証する。特にヒトには存在しないシグナル経路や代謝経路に注目し、従来のいかなるスクリーニング系でも探索されることのなかった全く未知の生命現象を推定しながら、ヒトがん治療への介入ポイントを探る。
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