研究課題/領域番号 |
20K20464
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 洋人 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (60446549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能ゲノミクス・スクリーニング / 微生物ゲノム / がん治療 / 次世代シーケンス / 合成生物学 |
研究実績の概要 |
以下3項目の研究計画を進めた。 (1)微生物cDNAをゲノムスケールでレンチウイルス・ライブラリ化:ヒト共生菌の代表としての大腸菌などについて、その網羅的cDNAを哺乳類細胞で発現可能なレンチウイルス・ライブラリに組み換えて構築した。 (2)微生物cDNAライブラリを用いた機能ゲノミクス・スクリーニング系の確立:以下の4段階で進めた。(A)多様なヒトがん細胞株に対して1細胞に1レンチウイルスが導入されるような感染タイトレーションを確立した。(B)レンチウイルス感染後のヘテロがん細胞集団を免疫不全マウスに移植し、in vivo環境の強い選択圧のもとでclonal selectionを起こさせる実験プロトコールを確立した。(C)腫瘍ゲノムDNAに対して、ヒトゲノムに導入された微生物cDNAを標的とした次世代シーケンス解析によって、in vivo腫瘍を構成するヒトがん細胞集団におけるcDNAレパトアの増減をカウントし、in vivoにおいてクローンの減少・脱落あるいは増加を呈したcDNAクローンを抽出した。(D)シングルセルレベルの解像度でこれらの機能ゲノミクス・スクリーニングを実施するための条件検討を進めた。 (3)スクリーニングからみえた細胞生物学的現象を新規がん治療標的として応用するための検証実験:スクリーニングで抽出された「ヒトがん細胞に細胞死・増殖抑制を起こす微生物cDNA」あるいは逆に「ヒトがん細胞の増殖を活性化する微生物cDNA」などの候補について、それらの微生物cDNAがヒト細胞内のホメオスタシスにどのような揺さぶりをかけ、どのような分子メカニズムで細胞死や増殖抑制などを引き起こしているのかについて類推し、実験的に検証するための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究を進めることができており、当初の計画通りに概ね順調に進展している。 具体的には、さまざまな微生物cDNAをゲノムスケールでレンチウイルス・ライブラリ化し、ヒト細胞で強制発現可能なライブラリとして構築することができた。また実験条件の洗練化によって、それらの微生物cDNAライブラリを用いた機能スクリーニングの系を確立し、実際の実験を進めることができた。前年度までに、さまざまなヒトがん細胞株について免疫不全マウスを用いた機能ゲノミクス・スクリーニングを進めることができた。スクリーニングからみえてきた細胞生物学的現象をがん治療に応用するための検証実験についてプロトコールの検証と洗練化を進めることができており、今後の研究の準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
以下2項目の研究計画を進める。 (1)微生物cDNAライブラリを用いた機能ゲノミクス・スクリーニングを大規模に実施:以下の4段階の実験を進める。(A)多様なヒトがん細胞株に対して1細胞に1レンチウイルスが導入されるようなタイトレーションでcDNAライブラリを感染させる。(B)レンチウイルス感染後のヘテロがん細胞集団を免疫不全マウスに移植し、in vivo環境の強い選択圧のもとでclonal selectionを起こさせる。(C)in vivo腫瘍のゲノムDNAに対して、ヒトゲノムに導入された微生物cDNAを標的とした次世代シーケンスによって、in vivo腫瘍を構成するヒトがん細胞集団におけるcDNAレパトアの増減をカウントし、in vivoにおいてクローンの減少・脱落あるいは増加を呈したcDNAクローンを抽出する。(D) 上記の(A)~(C)と併せて、cDNAウイルスを導入したヘテロ細胞群におけるシングルセル・トランスクリプトーム解析を行い、微生物cDNAがヒト細胞内で引き起こすシグナル変動を1細胞レベルの解像度で詳細に解析する。 (2)スクリーニングからみえた細胞生物学的現象を新規がん治療標的として応用するための検証実験を進める:上記のスクリーニングで抽出された「ヒトがん細胞に細胞死・増殖抑制を起こす微生物cDNA」あるいは逆に「ヒトがん細胞の増殖を活性化する微生物cDNA」などの候補について、それらの微生物cDNAがヒト細胞内のホメオスタシスにどのような揺さぶりをかけ、どのような分子メカニズムで細胞死や増殖抑制などを引き起こしているのかについて類推し、実験的に検証する。特にヒトには存在しないシグナル経路や代謝経路に注目し、従来のいかなるスクリーニング系でも探索されることのなかった全く未知の生命現象を推定しながら、ヒトがん治療への介入ポイントを探る。
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