研究課題/領域番号 |
20K20466
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大山 力 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80282135)
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研究分担者 |
畠山 真吾 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (10400136)
坪井 滋 弘前大学, 医学研究科, 研究員 (20526727)
山本 勇人 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (30532759)
盛 和行 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40266903)
米山 徹 弘前大学, 医学研究科, 助教 (50587649)
橋本 安弘 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60322939)
青木 昌彦 弘前大学, 医学研究科, 教授 (70292141)
米山 高弘 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (90374834)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホウ素中性子補足療法 / 薬物送達 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
BNCTでは,投与した10B薬剤が投与後,どの程度の時間でBNCTの抗腫瘍効果に必要な組織内10B濃度に達するかをあらかじめ調べる必要がある。合成した2種類のIF7-10B薬剤が腫瘍組織に効果的に集積するかどうかについて担癌マウスモデルにおける10BのBiodistribution studyを実施した。7 mg/kgに調製したIF7-10BPAあるいは,IF7-10BSHを担癌マウスの尾静脈より 投与し,即発 γ 線測定法(PGA法)により,各臓器中のホウ素集積濃度を定量し,マウスにおける薬物動態について検討した。その結果から,IF7-10BPAおよびIF7-10BSHは投与後20分以内にBNCTの抗腫瘍効果に必要な組織内10Bである20 ppm以上に達することが示された。IF7-10B薬剤と同濃度の10BPAあるいは,10BSHでは組織内濃度が20 ppm以上に達することはなかった。またホウ素の集積時間は,10BPAが投与後2時間程度で腫瘍特異的ホウ素集積性が認められるすでに明らかとなっているが,IF7-10BPAおよびIF7-10BSHは,投与後約20分でBNCTの治療効果が得られるとされる20 ppm程度の腫瘍部ホウ素集積性を示し,従来ホウ素製剤に比べ,6倍以上の速度で腫瘍特異的にホウ素が集積する可能性が示唆された。 次に,抗腫瘍効果の確認実験を行った。1x106個のヒト膀胱がん細胞株YTS-1細胞を右大腿部に播種し,1週間が経過した担がんマウスにIF7ペプチド-10B製剤(20 mg/kg)を腹腔内投与し,40分後に1時間の熱中性子照射(BNCT)を行った。さらに1週間後,同様にしてIF7-10B薬剤投与+BNCT治療を実施した。最終BNCT治療後も2週間程度増殖抑制効果が持続していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IF7ペプチド-抗がん剤複合体による腫瘍血管内皮細胞を標的としたがん特異的化学療法と同様に,BPA薬剤の大幅な投与量削減を実現した。従来のBNCT治療では,腫瘍のみを治療標的としていたが,IF7-10B投与+BNCT治療は腫瘍血管と腫瘍組織を同時に治療標的とすことができる。さらに,複数回のBNCT治療を可能にするドラッグデリバリーシステムとして,次世代BNCTホウ素製剤の候補となる可能性が示された。以上の理由から,本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から熱中性子が届くのは頭頸部,体幹部に限らず体表から7-8 cmとされている。現時点で使用可能な加速器BNCT治療では,この範囲に収まる腫瘍が治療対象となり,体表から8 cm以上の生体深部の腫瘍に対する治療は今後の課題となるが,中性子発生装置の開発とホウ素をより高濃度に腫瘍部位に送達するDDS技術の発展が不可欠である。中性子発生源装置に関しては,多門照射装置が開発中であり,将来的には,体表から25 cm程度まで治療範囲が拡大するとされている。熱中性子は,生体深部にいくほど減衰していくが,より高濃度のホウ素の集積が可能となれば,弱い中性子線量でもBNCT治療が可能になるといわれており,2つ目の課題であるホウ素化合物のさらなるがん特異性向上が有効である。 今後は,これまでの研究計画に沿ってIF7-10B投与+BNCT療法の有効性と安全性を確立するための動物レベルでの実験を継続し、ヒトを対象にした第1相臨床試験の準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度におけるアッセイキットの納入が、コロナ禍の影響で滞ったため、一部執行が出来なかった予算が生じた。2022年度にも同様の研究計画がある。
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