研究実績の概要 |
ヒト便プロテオーム解析技術の精度を高め、胆道閉鎖症および胎便に関する研究を開始している。 2019年度の胆道閉鎖症の解析は、希少サンプル故に、東京大学医学部付属病院で経験できた1症例に止まったが、胆道閉鎖症患児の術前の便中には、特徴的なタンパクプロファイルが存在する可能性が示唆された。 また、壊死性腸炎に代表される未熟腸管に起因した腸管トラブルの病因解明と新しいバイオマーカーの探索さらには新規治療法の開発を目指し、胎便の解析も進めている。東京大学医学部付属病院で出生した超低出生体重児(ELBWI: extremely low birth weight infant)1例(23週0日, 449g)、 低出生体重児(LBWI: low birth weight infant)2例(34週4日, 双胎, 1,959gおよび2,041g)および正出生体重児(NBWI: normal birth weight infant)1例(37週5日, 3,123g)の初回排便(胎便)を便プロテオーム解析で分析した結果、胎便に含まれる約4,000種類のヒト由来タンパク質が同定できた。解析した4検体のクラスター分析の結果、在胎23週0日で出生したELBWIの胎便タンパク成分は、他の3検体の胎便タンパク成分と比較すると異なる組成であった。限られた症例ではあるが、本解析結果から、ELBWIの胎便タンパク成分はLBWIやNBWIの胎便タンパク成分とは大きく異なることが示唆された。胎便は、消化管上皮に直接的に作用可能な物質の総合体であることから、ELBWIの胎便タンパク成分が、NECなどの未熟腸管に起因する腸管トラブルに関与する可能性が高く、そのタンパク成分の分析は重要と考えている。
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