研究課題/領域番号 |
20K20469
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤代 準 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60528438)
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研究分担者 |
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (20590847)
川島 祐介 公益財団法人かずさDNA研究所, ゲノム事業推進部, 研究員 (30588124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 便 / プロテオーム解析 / 胆道閉鎖症 / 早期診断バイオマーカー |
研究実績の概要 |
胆道閉鎖症(BA)の早期診断と早期治療を目指し非侵襲的に採取可能な便を利用して、かずさDNA研究所と共同して開発したData-independent acquisition mass spectrometry(DIA)ベースのプロテオーム解析を利用したBAの早期診断バイオマーカーの探索を開始した。 胆道閉鎖症手術直前のBA4症例と乳児黄疸(non-BA)3症例の便を便プロテオーム解析で分析した。結果、便中に存在する2,110種類のヒトタンパク質が同定できた。そのうち、49種類のタンパク質が、BA群に多いタンパク質であり、CEACAM1、CEACAM5、CEACAM8が含まれていた。この中でも、CEACAM1とCEACAM8は、BA3症例と健常コントロールを含んだ6症例(乳児黄疸=non-BA2例と黄疸のない乳児4例)の解析においても、BA群に多いタンパク質であることがわかった。 CEACAM1は胆道の糖タンパクとして知られ、肝胆道系の閉塞や炎症などに関連することが報告されており、胆道閉鎖症の早期診断バイオマーカーになる可能性があると考えている。CEACAM familyは、本年度の研究で同定できたタンパク質の一部ではあるが、本研究により、便中のタンパク質の中には、BAの診断マーカーになりうるタンパク質が含まれてる可能性を示唆することができた。 本年度の研究において、我々は、便を利用したDIAベースの便プロテオーム解析システムを構築することができた。BAの早期診断バイオマーカーの創出を目指し、次年度以降も、継続したBAおよびnon-BA症例および健常コントロール症例の蓄積と解析を続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、かずさDNA研究所と共同して、Data-independent acquisition mass spectrometry(DIA)ベースのプロテオーム解析の構築に成功した。また、これを便解析に応用することで、DIAベースの便プロテオーム解析の構築にも成功した。 胆道閉鎖症(BA)は、早期診断と早期治療が患児予後と直結する小児外科疾患であるが、有用な診断バイオマーカーはなく、診断には難渋する。そこで、新たに構築したDIAベースの便プロテオーム解析を用いて、BAの早期診断バイオマーカーの探索を開始し、BAの早期診断バイオマーカー候補となる便中のタンパク質を同定し、国際誌(proteomes)に 、成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
DIAベースの便プロテオーム解析を利用して、胆道閉鎖症(BA)の早期診断バイオマーカーの探索を継続する。また、CEACAM1やその他のBA早期診断バイオマーカー候補タンパク質の同定が進めば、実臨床を想定して、 ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)SRM( selected reaction monitoring )を用いた解析を同時に行なっていく。また、各疾患のコントロールとしても重要となる各年代における健常小児の便解析を進め、健常小児の便中に含まれる、ヒトタンパク質プロファイルを作成することを目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に納品予定の物品の一部が2021年度に納品、会計処理されることとなり、次年度使用額が生じた。 持ち越し予算は上記の物品が納入されることにより使用予定である。
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