研究課題/領域番号 |
20K20470
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 国際医療福祉大学, 医学研究科, 教授 (40183305)
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研究分担者 |
立川 正憲 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00401810)
松下 拓也 九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 助教 (70596395)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 多系統萎縮症 / α―シヌクレイン / ミクログリア / アストログリア / 脱髄 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)は代表的な中枢神経脱髄疾患である。一方、多系統萎縮症(multiple system atrophy, MSA)は、小脳/錐体外路/自律神経等を侵す治療法のない神経変性疾患で、オリゴデンドログリアにα-シヌクレイン(α-syn)から成る封入体が形成され脱髄と神経脱落を生じる。MS(脱髄)とMSA(変性)の共通メカニズムは全く報告がないが、MS病巣ではα-synがオリゴデンドログリア、ミクログリア、ニューロンに蓄積し、髄液で上昇していることに着目し、私たちはMSとMSAで共通面のあるα-synの関与に着目し、凝集性の強い変異α-synA53TをTet-off系で任意の期間オリゴデンドログリアに発現できるマウスを樹立した。このオリゴデンドログリア特異的ヒト変異αSyn A53T発現マウスは、離乳直後の髄鞘形成期から変異α-synを発現させると片麻痺/対麻痺/小脳失調等の多彩な症候と脳幹から頚髄にかけての顕著な脱髄とT細胞浸潤を示す進行型MS様病態を呈した。他方、髄鞘完成後の成熟期以降に発現させると小脳失調を主徴とし脳幹から小脳白質がびまん性に脱髄するMSA-C様病態を示した。今年度は、MSA-Cモデルでの詳細な解析を行った。病巣では、ミクログリアとアストログリアが炎症性に活性化していた。異常蛋白の分解を亢進させるPROTACの脳室内投与で、α-synが減少しグリアの活性化が抑えられ、病状の進行が軽減した。しかし、CSF1受容体阻害薬を発症直前から投与開始すると、逆に症状は進行し、保護的ミクログリアが減少し炎症性ミクログリアが増加した。脳より単離したミクログリアのsingle cell RNA sequenceにより、α-syn蓄積に関連した神経障害性ミクログリアの同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多系統萎縮症小脳型のマウスモデルの作成に成功し、このモデルの脱髄病態の解明が進んだため。特に神経障害性に作用する炎症性ミクログリア集団の同定に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
今回同定したα―シヌクレインの蓄積に密接に関連して出現し神経障害を起こすミクログリアの表面マーカーを解析し、特異的なマーカーに対する抗体を用いた組織免疫染色により、その出現部位、疾患の進行に伴う動態、α―シヌクレイン蓄積との関係を明らかにする。同じ分子をヒト多系統萎縮症剖検標本でも検討し、ヒト疾患でもα―シヌクレインの蓄積に関連して出現しているかを明らかにする。上記のα―シヌクレイン蓄積に関連して出現するミクログリアに対する特異的抗体を、in vitroの培養ミクログリアに作用させ、ミクログリアをどのように変化させるかを解析する。さらに、この特異抗体を本マウスモデルに投与して、in vivoでも治療効果があるかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体などの試薬の納品が遅れたため。分子マーカー等に対する抗体等が導入され次第、令和4年度に組織免疫染色、及び培養ミクログリアやトランスジェニックマウスモデルへの作用を解析する予定である。
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