研究課題
多系統萎縮症(MSA)は、小脳/錐体外路/自律神経等を侵す神経変性疾患で、オリゴデンドログリアにα-シヌクレイン(α-syn)から成る封入体が形成され脱髄と神経脱落を生じる。多発性硬化症(MS)は代表的な中枢神経脱髄疾患であるが、MSとMSAに共通する病態機序は全く報告がない。MS病巣でもα-synがオリゴデンドログリア、ミクログリア、ニューロンに蓄積し、髄液で上昇しているとの報告から、私たちはMSとMSAで共通性のあるα-synの関与に着目し、凝集性の強い変異α-synA53TをTet-off系で任意の期間オリゴデンドログリアに発現できるマウスを樹立した。このオリゴデンドログリア特異的ヒト変異αSyn A53T発現マウスは、離乳直後の髄鞘形成期から変異α-synを発現させると片麻痺/対麻痺/小脳失調等の多彩な症候と脳幹から頚髄にかけての顕著な脱髄とT細胞浸潤を示す進行型MS様病態を呈した。他方、髄鞘完成後の成熟期以降に発現させると小脳失調を主徴とし脳幹から小脳白質がびまん性に脱髄するMSA-C様病態を示した。今年度は、MSA-Cモデルでのミクログリアの詳細な解析を行った。ミクログリアの生存に不可欠とされるCSF1受容体阻害薬を発症直前から投与開始すると、臨床的にも病理学的にも増悪した。脳より単離したミクログリアのsingle cell RNA sequenceにより、α-synucleinopathyに関連した神経障害性・炎症性ミクログリアの同定に成功し、α-synucleinopathy-associated microglia (SAM)と命名した。CSF1受容体阻害薬投与により、SAMが増加し保護的ミクログリアが減少した。
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eClinicalMedicine
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