研究実績の概要 |
原則として自己再生能がない心臓は再生医療の重要なターゲットである。現在iPS細胞などを用いた心臓再生の試みが進められているが、それ らはすべて「分化した心筋細胞を補充すること」による心臓機能改善を目指したものである。造血幹細胞移植治療に明らかなように標的臓器の 幹細胞移植による幹細胞システムの再構築は生涯に渡る治癒をもたらす。しかし最近「成体心臓においてはこうした幹細胞が存在しない」と報 告された。本研究は欠如している「幹細胞システムそのものを再構築すること」により、永続的な心臓再生と若々しい心機能維持が実現可能な 「新しい心臓」を作り出す画期的な新規心臓再生戦略を開発することを目的とする。 1)ヒト多能性幹細胞から心筋幹細胞を誘導する。 最近、ヒトiPS細胞から、心臓への移植後においても特異的に(95%以上の効率で)心筋細胞に分化する「心筋に運命決定した前駆細胞(CFP細 胞)を誘導・同定した (Takeda, Cell Reports, 2018;22:546-556)。 現在、CFP細胞のマーカーであるCD82の発現を保ったまま、細胞を増殖させうる 培養条件を見いだしている。本細胞が「心筋特異的幹細胞(Cardiomyocyte-fated Stem Cells: CF-Stem細胞)」として機能すれば、世界初の 心筋特異的幹細胞の誘導・同定となる。 CFP細胞を増殖させCF-Stem細胞として利用できる培養条件を確立する。 本年度は、将来的臨床応用の可能性も視野に入れ、HLAホモiPS細胞株であるFfI-01s04株において同様の検討を行った。CD82陽性CFP細胞の出現タイムコースが従来の細胞株とは異なり、CFP細胞誘導純化法を細胞株によって微調整した。
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