研究課題/領域番号 |
20K20471
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50335288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心臓再生 / 心臓幹細胞 / 心臓前駆細胞 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
「ヒト多能性幹細胞から心筋幹細胞を誘導する。」 研究代表者らは、ヒトiPS細胞から、心臓への移植後においても特異的に(95%以上の効率で)心筋細胞に分化する「心筋に運命決定した前駆細胞(CFP細胞)を誘導・同定した (Takeda, Cell Reports, 2018;22:546-556)。CFP細胞を、心筋分化能を保ったまま増殖することができれば、それは「心筋特異的幹細胞(Cardiomyocyte-fated Stem Cells: CF-Stem細胞)」として機能しうる。これまでにCFP細胞のマーカーであるCD82の発現がある程度保たれたまま、細胞を増殖させうる化合物を見いだしている。本細胞が「心筋特異的幹細胞(Cardiomyocyte-fated Stem Cells: CF-Stem細胞)」として機能するか検証し、CFP細胞を増殖させCF-Stem細胞として利用できる培養条件を確立することを目指した。 CFP細胞よりもやや未分化と考えられる心血管前駆細胞に関しては、種々の拡大培養方法が報告されている。それらの方法を導入しCFP細胞の増殖を行ったが、いずれにおいても十分な拡大培養は行えなかった(CD82の発現が維持されない。または、ある程度維持されたとしても心筋分化能は十分に維持されていない)。細胞の分化ステージが異なることが一つの大きな要因と考えられる。 現在造血幹細胞などを含む種々の幹細胞維持・拡大培養法を参照しながら、培地・添加物質・細胞外マトリックス等様々なパラメータを操作しながらCFP細胞の拡大培養を行っている。3日間であれば心筋分化能を保持しながらCFP細胞を拡大培養することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初見出していたCD82発現を維持した培養法においては、心筋分化能は十分に維持されておらず、最終的な心筋分化能を確認しながら新たな方法を検討することが必要となった。これまでに蓄積された種々の幹細胞維持・拡大培養法を参照しながら、CFP細胞の維持拡大に必要なパラメータを様々に操作・検討し、3日間であれば、心筋分化能を維持したままCFP細胞を拡大培養することには成功した。したがって、問題の解決に向けて進捗が認められている。
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今後の研究の推進方策 |
CD82発現と同細胞の心筋分化能の維持に関しては、それぞれ評価法が定まり、種々の条件の比較検討が可能となっている。これまでに見出されたいくつかの手がかりをもとに構成的に条件を組み上げる方法による検討を行う。 これまでに3日間の拡大培養には成功した。本条件をもとに7日間の拡大培養を可能とする。また凍結融解によりCFP細胞を保存しながら使用できる様にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度前半4-6月期において緊急事態宣言の発来に伴う研究活動の抑制、実働研究人口の抑制により、実質的に研究を行うことができなかった。それによる研究の遅れを無理なく補正し効率的に研究推進を行うためには、「無理に研究を当該年度に押し込めるのではなく、次年度への繰り越しを行い十分な検討・解析の期間を設ける方が有用」と考えられた。2021年度はコロナ禍による直接的な研究活動の抑制は明らかではなかったが、2020年度分の遅れの補正として上記理由により2022年度への繰り越しを行った。
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