研究実績の概要 |
本研究課題が目標とする項目の一つは、「ヒト多能性幹細胞から心筋幹細胞を誘導する。」である。研究代表者らは、ヒトiPS細胞から、心臓への移植後においても特異的に(95%以上の効率で)心筋細胞に分化する「心筋に運命決定した前駆細胞(CFP細胞)を誘導・同定した (Takeda, Cell Reports, 2018;22:546556)。CFP細胞を、心筋分化能を保ったまま増殖することができれば、それは「心筋特異的幹細胞(Cardiomyocyte-fated Stem Cells: CF-Stem細胞)」として機能しうる。本細胞が「心筋特異的幹細胞(Cardiomyocyte-fated Stem Cells: CF-Stem細胞)」として機能するか検証し、CFP細胞を増殖させCF-Stem細胞として利用できる培養条件を確立することを目指した。 これまでに心筋分化能を保持しながら3日間CFP細胞を拡大培養することに成功した。心筋細胞増殖条件等検討し、7日目までの増殖は可能であった。心臓への移植生着効率を向上させる新しいバイオマテリアル(インジェクタブルゲル技術)を用いてCFP細胞のラット心臓への移植を行った。その結果、CFP細胞はほぼすべて(>95%)が心筋トロポニン陽性の心筋細胞に分化し、移植後8週間では、心筋細胞の伸長と配向、サルコメアの形成など、細胞・組織レベルでの成熟化が認められた。CFP細胞1個から約7個の心筋が生成できると考えられた。完全なCFP細胞の幹細胞化は困難であったが、CFP細胞を元にした効率的な心臓再生細胞治療の可能性が広がった。
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