研究課題/領域番号 |
19H05567
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 理行 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)
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研究分担者 |
村上 智彦 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50510723)
高畑 佳史 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60635845)
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 炎症性サイトカイン / 細胞内シグナル / 転写因子 / 創薬 |
研究実績の概要 |
未曾有の超高齢社会を迎え、歯周疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、悪性腫瘍の骨転移などの骨および軟骨組織の破壊性疾患が増加し、臨床的にも医療経済的にも大きな問題として顕在化している。これまで、破骨細胞による骨吸収を阻害する第一世代の治療薬、骨芽細胞による骨形成を促進する第二世代の治療薬が開発されたが、未だこれらの疾患を完全に克服できておらず、これら治療薬の副作用や医療費増大などの課題も山積している。したがって、新たな観点に基づく第三世代の治療薬の開発が急務である。骨組織および軟骨組織は、骨髄あるいは関節腔と接しており、免疫細胞と細胞間相互作用を有していると考えられ、骨生物学と免疫学の融合、いわゆる“骨免疫学”が提案された。そこで本研究では、骨組織および軟骨組織の破壊過程に対する免疫細胞の直接的関与に着目し、骨免疫学の新機軸を創出し、骨・軟骨破壊性疾患に対する新たな創薬基盤の構築を目指して研究を遂行している。すでに同定しているマクロファージが産生する新規炎症性サイトカインの遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その機能的重要性を検索した結果、この新規炎症性サイトカインが関節軟骨破壊において重要な役割を果たしていることを明らかにした。この新規炎症性サイトカインの受容体の構成分子を明らかにするために、遺伝子データベース解析、質量分析解析およびパスウェイ解析を実施した。これらの解析により、このサイトカインの受容体構成分子群を明らかにした。これらの分子の遺伝子をノックダウンおよび阻害剤を用いたin vitro解析によって、これら受容体構成分子群が、新規炎症性サイトカインの作用を伝達することを見出した。遺伝子ノックアウトマウスを用いた実験にても、このデータの意義を検証できた。次に、この受容体分子に結合するタンパク質を検索したところ、その細胞内シグナル情報伝達および転写因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.新規炎症性サイトカインの遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その炎症性関節軟骨破壊における重要性を示した。 2.新規炎症性サイトカインの受容体構成分子を同定し、その必要性を明らかにした。 3.新規炎症性サイトカインの細胞内の情報伝達経路を担う分子とその経路を解明した。 4.新規炎症性サイトカインの作用を担う転写因子群を同定した。 以上の事由を総合的に考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究成果を基盤にして、以下の研究計画を実施して、研究を推進する。 1.新規炎症性サイトカインの細胞内シグナル情報伝達経路を担う分子および転写因子の必要性を明らかにするために、それぞれの分子および転写因子の遺伝子を欠損するノックアウトマウスを作製する。遺伝子ノックアウトマウスの作製は、Cas9ゲノム編集法を用いることにより、迅速かつ効率的に実施する。 2.上記で作製したノックアウトマウスが生存可能な場合は、病態モデルを作製して、野生型マウスと比較検討して、その病理学的意義を検索する。作製したノックアウトマウスが胎生致死の場合は、それぞれのマウスから初代細胞を採取して、新規炎症性サイトカインに対する反応性および生物学的重要性を検索する。具体的には、免疫共沈降法、ウエスタンブロッティング法、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、クロマチン免疫法、RT-qPCR法による遺伝子解析、分子形態学的解析を実施して、新規炎症性サイトカインとの関係を明らかにする。 3.歯周疾患、骨粗鬆症、関節リウマチにおける新規炎症性サイトカインの発現動態を明らかにするために、FACSを用いてその検索を行う。さらに、新規炎症性サイトカインに蛍光タンパク質遺伝子Venusを導入した、ノックインマウスを作製する。このノックインマウスが作製でき次第、病態モデルを作製し、その発現をリアルタイムかつ経時的に解析する。 4.新規炎症性サイトカインの細胞内シグナル情報伝達経路と転写因子群の相互的な役割を明らかにするために、上記で作製したそれぞれノックアウトマウス由来の初代細胞を用いて、細胞内シグナル経路あるいは転写因子の機能や発現が影響を受けるか否かを探索する。またそれぞれの阻害剤による添加実験やドミナントネガティブ変異体の過剰発現実験も並行して実施する。
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