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2020 年度 実施状況報告書

スポーツボール用磁力支持天秤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K20478
配分区分基金
研究機関山形大学

研究代表者

瀬尾 和哉  山形大学, 理学部, 教授 (60292405)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード磁力支持天秤 / ボール / 球 / 回転 / スポーツ流体
研究実績の概要

2020年度は,1)概念設計法の確立,2)山形本学版磁力支持天秤の運用開始,3)球に作用する抗力の測定,を行った.
1)磁力支持天秤(Magnetic Suspension and Balance System, MSBS)の概念設計法(連携研究者である元福岡工大・河村良行教授が起案)の妥当性を確認した.具体的には,ビオサバールの法則から磁気力を見積もるプログラムを作成し,シミュレーションした.一方,小型の空芯コイルとネオジウム磁石により,磁気力を測定した.実験結果とシミュレーションを比較した結果,空芯コイルの軸上にネオジウム磁石がある場合は定量的に一致,空芯軸上にネオジウム磁石が無い場合でも定性的に一致した.以上より,概念設計法を確立できた.すなわち,任意サイズののコイルとネオジウム磁石の組合せに対して,磁気力を見積もることができるようになった.
2)昨年度末に納入された山形大学版磁力支持天秤装置の運用を開始した.位置校正試験用の6軸ステージ,力校正試験用に非磁性体である真鍮製の錘と錘受け皿を特注し,校正試験の態勢を整えた.また,UFO型の標準模型をNCナイロンで製作し,100gf程度の荷重に耐えられることを確認した.
3)球に作用する流体力を測定した.このために,カーボン製の直径100mmの球を製作した.力校正試験の結果,70gf程度の荷重に耐えられることを確認した.これは,風速12m/s程度の抗力に相当する.実際に風洞試験した結果,測定したレイノルズ数範囲では,抗力係数CDは約0.5の一定値であった.
これらの結果をISEA(International Sports Engineering Association 2020, 国際スポーツ工学会)のKeynoteをはじめとして,国内外の学会で発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

風洞の測定空間に磁力支持天秤装置を設置し,球に働くありのままの流体力を測定した.測定したレイノルズ数範囲では,抗力係数CDは約0.5の一定値であった.このために,位置校正用治具一式,力校正用治具一式を製作した.細かなノウハウを蓄積した.例えば,工具を非磁性体に置換する(銅製六角レンチ&ドライバー,ステンレス製定規),落下しても壊れない模型の材料や製作法等である.
以上より,おおむね順調に進捗している,と判断した.
ただし,実験を進めていく中で,次年度への課題もいくつか顕わになってきた.詳細は,以下の今後の推進方策に記述する.

今後の研究の推進方策

第一の課題は,磁力支持天秤装置(MSBS)の耐荷重を高めることである.球を供試体とした場合のMSBSの耐荷重は70gf程度であった.この耐荷重は,想定の半分程度である.耐荷重を高めることが課題である.球の素材をエポキシとガラス繊維に変更すること(カーボン素材は渦電流を発生させてしまう),制御定数をチューニングすること(シミュレーションで制御定数を予測可能にすること,その後,実験室現場で詳細調整を行うこと),z位置(鉛直位置)測定用レーザーと光位置計測機の高さを調整すること(現在は,UFO型標準模型用のz高さ),鉛直軸周りの自励回転の原因を解明し,それを迎えること,段差のある反射シール(流れを乱してしまう)を段差のない反射ペイント等に置換すること,モーメント校正法を確立すること等々,次の課題が顕わになってきた.
第二の課題は,実プロジェクトへむけたMSBSの大型化である.本課題では,大型MSBSを製作する予算的余裕は無いが,その先鞭をつけておく.本研究室の風洞吹き出し口は,70cm四方であり,大型化とはMSBSサイズを測定空間よりも大きくすることである.2021年度にできることは,例えば,大型空芯コイルを1つだけ製作し,ネオジウム磁石との磁気力を測定する.同じ条件で,2020年度製作したプログラムにより,シミュレーションを行う.実験とシミュレーションを比較し,後者の妥当性を大型空芯コイルでも確認する.大型MSBSの概念設計をする.
以上の課題を解決することが今後の推進方策である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] ラグビーのキックに関する可視化 ―セブンスラグビーの楽しみ―2020

    • 著者名/発表者名
      瀬尾和哉,中島正太,浜野俊平,岩渕健輔
    • 雑誌名

      JOURNAL OF THE FLOW VISUALIZATION SOCIETY OF JAPAN

      巻: 40 ページ: 6-9

  • [雑誌論文] Flow Behavior Caused by Air Permeability of Ski Jumping Suit Fabric2020

    • 著者名/発表者名
      Y. Kataoka, H. Hasegawa, M. Murakami, K. Seo and S. Obayashi
    • 雑誌名

      Proceedings

      巻: 49 ページ: 109

    • DOI

      10.3390/proceedings2020049109

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Measurement of the aerodynamic forces acting on a non-spinning javelin using a MSBS2020

    • 著者名/発表者名
      Takuto Kobayashi, Kazuya Seo, Shoya Kaneda,Sasaki Kasumi, Kento Shinji, Shogo Oyama, Hiroyuki Okuizumi, Yasufumi Konishi, Hiroaki Hasegawa, Shigeru Obayashi
    • 雑誌名

      Proceedings

      巻: 49 ページ: 144

    • DOI

      10.3390/proceedings2020049144

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東京オリパラへの期待 自転車・投擲・セブンスラグビー2020

    • 著者名/発表者名
      瀬尾和哉
    • 雑誌名

      ながれ

      巻: 39 ページ: 145-150

  • [雑誌論文] Optimization of Flight Distance for Three Types of Javelin Tip2020

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Seo and Takuto Kobayashi
    • 雑誌名

      ISBS Proceedings Archive

      巻: 38 ページ: 93

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 飛翔中のラグビーボールの挙動 -揺れるハイパント-2020

    • 著者名/発表者名
      瀬尾和哉
    • 雑誌名

      土木技術

      巻: 75 ページ: 49-54

  • [学会発表] Numerical simulation of ballistic trajectories based on wind tunnel experiments2020

    • 著者名/発表者名
      Kae Tsunematsu, Kazuya Seo, Masaru Kawakami
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合(JPGU)2020
  • [学会発表] Lessons of the past, prospects for the future2020

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Seo
    • 学会等名
      ISEA2020
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Lessons of Sports Engineering2020

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Seo
    • 学会等名
      International Webinar-II on Sports Engineering
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 東京オリンピック・パラリンピックで使用する自転車ロードレース用スーツの開発2020

    • 著者名/発表者名
      瀬尾和哉,佐藤充,鎌田圭介,小林拓人
    • 学会等名
      日本機械学会SHDシンポジウム
  • [学会発表] 通気量パッチワークスキージャンプススーツの空力改善への可能性2020

    • 著者名/発表者名
      片岡裕樹、長谷川裕晃、村上正秀、瀬尾和哉、 大林茂
    • 学会等名
      日本機械学会SHDシンポジウム

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公開日: 2021-12-27  

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