研究課題
加齢や生活習慣病によって発症する病態として、脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が知られている。特に中年期より、病態発症のリスクが上昇する。その原因は、加齢による代謝機能や環境適応の変化が考えられる。また、脂肪肝発症における脂肪滴蓄積とクッパー細胞・炎症性マクロファージの相互作用は、病態増悪の一因である。研究開始の本年度は、①中年期マクロファージの機能解析、② miRNA コンディショナルノックアウトマウス作製及び表現系解析、③ miRNA アンチセンスオリゴ(AS ODN)の治療効果の検証を行った。その結果、① miR-Seq 及び mRNA-Seq を用いた解析により、加齢マクロファージ特異的 miRs 及び mRNA 同定に成功した。そして、遺伝子発現レベルを考慮した miR と標的 mRNA 相互作用解析を行い、定常状態から活性化過程における遺伝子発現制御機構を、バイオインフォマティクスレベルで解明することができた。②LNA 修飾 miR AS ODN を i.p. 投与によって、肝臓における miR 発現抑制効果を検証した。その結果 miR AS ODN は、miR 発現抑制効果を認めた。しかし、コントロールオリゴ投与によって miR 発現上昇も認められた(オフターゲット効果)。
2: おおむね順調に進展している
本研究に必要なモデルマウスの作製、独自に開発した AS ODN の in vivo における効果の検証、並びに必要な解析系プラットフォームの確立に注力した。そして研究実績の概要に記載したように、本年度の目的をほぼ達成することができた。さらに、新学術領域のサポートによる最新イメージング技術を用いた機能解析及びシングルセル解析に着手する機会を得るなど、滞りなく研究は進捗している。以上の理由で「おおむね順調に進展している」と判断した。
今後は全身性 miR KO マウス解析に続き、コンディショナル miR cKO マウスを用いて解析を行う。特に、ミトコンドリア形態と代謝機能の関連性の解明を進捗させ、新たな視点における、RNA ワールドが制御する脂肪肝発症過程の分子メカニズム解明を目指す。また、ヒト肝臓サンプルを用いて、マウスデータとの比較検証を行う。miR AS ODN については、①低濃度での検証、②肝細胞特異的に取り込ませることのできる N-アセチルガラクトサミン修飾核酸などドラッグデリバリーを工夫する事を考えている。
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Geriatrics and Gerontology International
巻: 20 ページ: 238-247
10.1111/ggi.13848
医学のあゆみ
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