研究課題/領域番号 |
20K20479
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森 亮一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30509310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症 / ミトコンドリア / 脂肪肝 / 非コード RNA |
研究実績の概要 |
食生活習慣の変化や加齢に伴って発症リスクが上昇する病態として、脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目されている。これら病態は、生活習慣や体内の生理的変化が始まる中年期より病態発症のリスクが上昇すると考えられている。その原因は様々な環境因子や代謝機能が関連していると考えられており、特に、肝細胞及びクッパー細胞における microRNA-142(miR-142)が関与していると考えられているがその分子メカニズムは明らかではない。 本年度は、miR-142 コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを用いて、特にミトコンドリアの機能変化を中心に機能解析を行った。まず、FIB-SEM を用いて肝細胞内ミトコンドリアの3次元(3D)構造解析を行った。その結果、肝細胞 miR-142 cKO マウス由来肝細胞におけるミトコンドリア形態は、顕著に変化していた。次に、肝細胞特異的 miR-142 cKO マウス由来肝細胞を用いてβ酸化機能解析を行った。その結果、肝細胞特異的 miR-142 cKO マウス由来肝細胞は、コントロールと比較して、内因性β酸化能が減少していた。一方、外因性β酸化能は上昇していた。以上の結果より、miR-142 は肝細胞における脂肪代謝が亢進しており、その結果、miR-142 KO マウスでは、脂肪肝発症が遅延するのではないかと考えられた。 今後は、ミトコンドリア形態変化に関与する遺伝子群の発現様態の検証、各種 miR-142 cKO マウスにおける脂肪肝発症状態を詳細に解析する。そして、肝細胞およびクッパー細胞を中心とした脂肪肝発症メカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新学術領域のサポートによる最新イメージング技術を用いたミトコンドリア形態の機能解析に注力した。一方、生細胞内ミトコンドリア代謝機能を調べるために、初代肝細胞培養系を確立し、生細胞のエネルギー代謝経路を無侵襲且つ、経時的にプロファイリングすることに成功するなど、研究は進捗している。現在のコロナ禍で様々な遅延要因は避けることができないが、以上の理由で「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、全身性 miR-142 KO マウス及び miR-142 cKO マウスを用いて解析を行う。マクロ的視点に基づいたミトコンドリア形態と代謝機能の関連性が明らかになったので、次なる課題として、遺伝子発現レベルを中心に研究を進捗させる。また、ヒト肝臓サンプルを用いてマウスデータとの比較検証を行い、新たな治療戦略を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
雇用(人件費)及び顕微鏡構築の一部が来年度に持ち越されたため。既に研究補助員1名の雇用が決定しており、R3 年度には顕微鏡構築が終了する予定であるので、その際の支払いに用いる。
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