我々は皮膚創傷治癒研究を遂行し、炎症性 microRNA(miR)-142 は低分子量 GTP 結合蛋白質の翻訳制御を介した好中球遊走に必須であることを見いだした。一方、これら遺伝子改変マウス表現系解析を行っている過程で、miR-142 KO マウスは短寿命であるが高脂肪食餌により寿命延長が認められることを発見した。 中年期 miR-142 KO マウスの病理学的解析を行った結果、miR-142 KO マウスは、コントロールマウスと比較して、肝臓における加齢性脂肪滴の蓄積が有意に減弱していた。従って miR-142 は、加齢に伴う脂質代謝に関与していること、さらにはその破綻が寿命に影響を与えることが示唆された。 ミトコンドリアは脂質代謝やエネルギー産生を司る主要な細胞内小器官である。そこでミトコンドリアのイメージング解析並びに代謝解析を実施した。収束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いて miR-142 KO マウス肝臓由来ミトコンドリアを解析した結果、形態異常を呈していることを発見した。さらに形態異常と相まって、miR-142 KO 肝臓由来ミトコンドリアはβ酸化が上昇し(脂質代謝の亢進)、その結果 miR-142 KO マウスは加齢性脂肪肝発症が抑制されることを見いだした。miR-142 KO マウスの寿命短縮の原因は、肝臓における軽度慢性ミトコンドリア機能異常が一因であると推察される。miR-142 欠損における遺伝子発現変化と軽度慢性ミトコンドリア機能異常との関連性は明らかでない。今後はそれら分子メカニズム解明が必要であると考える。
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