研究課題/領域番号 |
20K20480
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金子 文成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (00344200)
|
研究分担者 |
牛場 潤一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00383985)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 身体所有感 / 主体感 / 報酬 / 仮想現実 / 脳 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「仮想身体であっても,それを自分が主体となって運動させることに成功し,かつ運動感覚を知覚すると報酬系神経回路が賦活 する」という仮説を明らかにすることである。本研究が達成されれば,脳卒中などの中枢神経障害により感覚運動麻痺を呈する患者のリハビリテーションに当該研究手法を適用した場合の効果機序を解明することにつながり,治療として新しいアプローチを開拓できる。このように本研究は,脳卒中などの中枢神経障害により感覚運動麻痺を呈する患者のリハビリテーション,あるいはスポーツなどで運動学習する過程において,ヒトが“報酬”を感じることの本質を科学的に理解するための挑戦的研究である。
2019,2020年度に実施した内容を基に,2021年度では以下の内容を実施した。 1.下肢切断者を対象に自身の義足に対する身体化に関する研究について,研究計画の立案および本実験の実施を行った。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,下肢切断者が自身の義足映像を観察しているときの脳活動(BOLD信号)と対象自身が感じている義足への印象,所有感,および身体機能との関係性を探索的に調査することを目的としている。下肢切断者5名,健常者4名のデータを取得済である。 2.自己身体運動-視覚刺激による運動錯覚が快情動に及ぼす影響を検証する研究の計画立案を行った。予備実験にとりかかる前の段階まで終了している状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は,前年度に引き続き,新型コロナウイルスの影響で,特に緊急事態宣言発令下においては,fMRIを計測する病院への立ち入り制限があり,想定していた対象者数を取得することができなかった。それにより,上記2の研究計画の立案にも遅延が生じた。現在は,上記1の実験のリクルートを継続している段階であり,かつ2の研究についても研究倫理申請済,および予備実験を進めるための計画を立て,着実に準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
fMRIによる実験の遂行 fMRI研究として,「研究実績の概要」で述べた2つの研究を計画的に実施する。 1の下肢切断者実験については,3種類の映像を提示する。具体的には自身の義足を提示する条件,自身の非切断側の足を提示する条件,自身の非切断側の足を左右フリップさせた映像を提示する条件である。3条件間でのBOLD信号の値を基に,自己身体関連領域の脳活動を比較する。そのBOLD信号と対象自身が感じている義足への印象,所有感,および身体機能との関係性を統計学的に探索する。年度終了までに,下肢切断者,健常者ともに20名のデータ取得を行うことを予定している。 2の運動錯覚の研究については,MRI用カメラなどを用いて,錯覚が生じるような環境を設定し,MRI環境内で自己身体および他者身体の2つの条件の映像を観察しているときの報酬系に関連する領域の脳活動を比較する。今年度前半に本実験を開始する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は,2020年度と比較し,fMRIを使用する施設における新型コロナウイルスの立ち入り制限の規則が緩和されたため,本実験を開始することができたが,緊急事態宣言発令下においては,研究の実施は困難であり,当初計画していた対象者数の確保が困難であった。2021年度に計画していた実験は,2022年度に継続して実施することとなり,それに伴って2021年度に使用を計画していた研究費を2022年度に繰り越す必要性が生じた。 2022年度は,実験にかかる費用(謝金等)を2021年度から繰り越した資金も含めて充当することで対処する計画である。
|