研究課題/領域番号 |
20K20481
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
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研究分担者 |
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 立体視 / リダイレクション / 視線計測 / アナモルフォシス / VR酔い |
研究実績の概要 |
3年目の今年度は,フェーズII:課題(A)「簡易裸眼立体視」の遅れ分を取り戻すとともに,フェーズIII:課題(B)「VR酔いの緩和」の前半を実施した.その成果の概要は以下の3項目に要約できる. 1. 課題(A)においては,「第三の眼」(仮想的利き目)の両眼間の按分位置を個人ごとに特定し,それに合わせてアナモルフォシスを先鋭化する方式を完成した.これにより,利き目に合わせるよりも臨場感・没入感の両効果ともに改善している事実を実験を通じて定量的に検証した.この効果が特に顕著に現れると期待される折畳み可能なディスプレイを搭載する小型モバイル環境へ提案システムを移植し,その実利的視覚効果の確かさも検証した.なお,「第三の眼」は,知覚心理学分野における「サイクロープスの眼」と同一の概念であることが判明した.以上の成果は,画像電子学会誌に論文として採択され,令和4年度同学会優秀論文賞に内定している.また国際会議Cyberworlds 2021で基調講演を行った. 2. 課題(A)で実現したアナモルフォシスベースの立体視は,眼球運動に無理な輻輳制御をかける既存の光学系立体視と異なり,本来的にVR酔いを誘発しにくい基質を伴うことに気付き,課題(B)の解決に向けたプラットフォームに流用する方針を策定した. 3. 項目2と独立した文献調査により,VR酔いを軽減するための別要素として,注視点から離れるほど解像度を相対的に下げる適応的制御の存在を知った.そこで,中心窩レンダリングを今後開発するうえで,無用な画像出力の遅延を回避するレイトレーシングの高速化手法として,境界ボリューム階層をインスタンシングし,異なる方向のレイの向きを揃える「アフィン変換レイアライメント方式」を新たに開発し,その性能評価を行った.現時点の成果は国内発表2件に留まるが,直近の発表では,情報処理学会CGVI研究会優秀発表賞を受賞している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遅れていたフェーズIIの課題(A)の内容を完成させ,その成果を公刊した国内学術誌論文は,2年に一度の学会優秀論文賞を受賞するレベルで評価されている. 一方フェーズIIIの課題(B)については,課題(A)の簡易立体視系で中心窩レンダリングを実行することで,VR酔いをかなり軽減できる方針が策定できた点で,最終年度に向けた準備を整えることができている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果として,課題(A)と(B)は不可分の関係にあることが判明した.最終年度前半のフェーズIII(課題B)では,簡易立体視系において,アファイン変換レイアライメント方式を利用した中心窩レンダリング手法を完成させ,VR酔いを軽減させる効果を定量的に分析する.その成果に立脚し,後半のフェーズIVで,立体視関連の他問題への展開可能性の模索と総括を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,対面でのシステム評価実験が制限され,謝金の支出が大幅に減り,かつ国内外の学会参加がすべてオンライン化されて旅費が必要でなくなったことが,次年度使用額が生じた理由である. 継続的かつ精緻な視線計測が可能な,小型化されたマルチディスプレイ環境で,VR酔いを軽減した立体視を実現するシステムを完成させる機材調達に利用するとともに,集中的な実験評価の謝金に計上する.コロナ禍の状況が許せば,最終成果を発表するため,国内外の学会にも精力的に参加する.
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