現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度、千葉大学病院・ヒト粘膜ワクチン学部門での動物実験体制が整備され、免疫感染実験を開始した。IgAKOマウスとタモキシフェン誘導型CD4-Foxp1KOマウスの凍結胚から生体作成も開始したが、繁殖が十分ではなく実験に供与できる十分な匹数が得られていない。そこでまず、粘膜分泌液中のPspA特異的IgA抗体の役割を明らかにする目的で、鼻腔に限局する肺炎球菌のマウス感染モデルを立ち上げた。ワクチン抗原のPspAと同じクレード2の株であるA66.1, D39, R36A (1 x 103 ~1 x 106/マウス) を未免疫マウスに経鼻投与(片鼻5 ul)し、5日後に鼻洗浄液を回収し生菌数を算出した。A66.1株による経鼻感染で安定した肺炎球菌数が鼻腔に定着することが明らかになった。 鼻腔に限局する肺炎球菌感染法を使った記憶免疫防御機能の評価のため、新たな記憶免疫の誘導を目的とし、PspA + CTを1週間ごとに3回経鼻免疫を行い、最終免疫から1週間後にPspA特異的免疫応答が誘導されていることが確認し、3ヶ月後、6ヶ月後の抗体価の変化を確認した。血清中のPspA特異IgG抗体、鼻洗浄液中のPspA特異IgA抗体の顕著な現象は認められなかった。現在継続して抗体価の減少を観察中である。
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今後の研究の推進方策 |
抗体価の減弱が確認できた時点で、CpG/pFLの経鼻投与を行い、抗体価の再上昇を確認する。その後、鼻腔内限局感染実験を行い、肺炎球菌特異的IgA抗体の役割を解析する。IgAKOマウスが十分に確保でき次第、同様な実験を行いPspA特異的IgA抗体の重要性を裏打ちする。また、令和5年度に計画したが、実施できなかった鼻洗浄液、血清中の抗原非特異的IgG抗体、IgE抗体や、炎症性サイトカイン(TNF-a,IL-1a, IL-1b, IL-6, IL-17)、アレルギー性サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-9, IL-13, IL-33)の測定を行う。 CpG/pFL経鼻投与によって、メモリーCD4+ T細胞によるFoxp1発現が抑制される事をFACS解析にて明らかにする。また、メモリーCD4+ T細胞をコンジェニックマウスに移入し、その後、CpG/pFL経鼻投与を行い、移入細胞のFoxp1発現が抑制され活性化エフェクターCD4+ T細胞へと分化することを明らかにする。 Foxp1の抑制性制御にはmiR-9, miR-34a,miR-150が重要な役割を果たして事が報告されている。そこで、CpG/pFLによって活性化されたNALT DCがこれらのmiRを分泌していることを定量性PCRにより証明する。またCpG/pFL経鼻投与した老齢マウスのNALT DCを分離し、機能欠損、機能獲得培養系にてmiR-9, miR-34の役割を検証する。
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