研究課題/領域番号 |
20K20497
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 克樹 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70243110)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 老化 / 血漿タンパク / 若返り / サル |
研究実績の概要 |
1)個体の老化の客観的指標となる細胞増殖能の評価:マーモセット5個体、ニホンザル3個体の細胞を採取し、増殖能を評価した。老齢個体では、幼齢個体や若齢個体に比べて増殖能が低下していることが確認できた。今後さらにデータ数を増やし、老化とともにどの程度変化するのかを確認する。2)血液採取:マーモセット5個体、ニホンザル3個体から採血し、成分分析を行うためのサンプルとして保存した。3)認知機能評価:マーモセット4個体で、逆転学習課題を訓練した。これまでのところ、若齢個体と比べて老齢個体で顕著な成績の低下は認められていない。そのため、老化による認知機能低下により感受性が高いと期待できる、前頭前野の行動抑制機能を評価するためのGO/NO-GO課題を新たに開発した。今後はGO/NO-GO課題も併用して老齢個体の認知機能を評価する。4)脳機能評価:マーモセット5頭で、MRIを用いてT1強調画像・T2強調画像・DTIを計測した。5)骨密度測定装置(DXA)を用いた骨密度・体脂肪率等の評価:新たに導入した骨密度測定装置(DXA)を用いて、マーモセット20頭を対象として、骨密度・体脂肪量・除脂肪量等を計測した。年齢とともに体脂肪量・体脂肪率・除脂肪量すべてが減少していく傾向が確認できた。壮年期に比べ老齢個体では、体脂肪量にして数十グラム、体脂肪率にして5%程度も減少することが明らかとなった。これらが老化の指標として有用であることが確認できた。今後さらにデータ数を増やし、老化とともにどの程度変化するのかを確認する。6)運動機能評価:独自に開発したビデオシステムを用いて3次元運動を計測した。
一方で、投与用のタンパクの準備を進めることができた。先行する齧歯類のデータをもとに、投与量を検討した。NMNに関しては、投与に十分と考えられる量が入手できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク投与前のデータが1)から6)の項目で順調に取得できている。2022年度にさらにデータ取得を進め、その後タンパク投与を開始したい。
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今後の研究の推進方策 |
上述の6つの項目を中心として、タンパク投与前のデータ取得を終えた個体から、順番にタンパク投与を開始していく。特に、全体的な活動量・脳機能・細胞増殖能でどのような変化が見られるのかを重点的に解析する。そのため、新たに分担研究者として、今村公紀博士を2022(R4)年度から迎え、細胞増殖能の評価を推進してもらう。脳機能の評価に関しては、鴻池菜保博士にMRI計測と脳波実験で協力してもらう。新潟大学の伊藤浩介准教授にも協力を依頼して、脳波を用いた脳機能計測では、物質投与の前後において、視覚刺激(同種他個体の顔写真等)および聴覚刺激(純音や他個体の鳴き声等)に対する誘発電位の大きさや潜時などを、投与前後で比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、研究活動の自粛等が求められ、動物を用いて思うような研究活動ができなかった。その分、前倒しで3年目で計画していた培養細胞の実験などを推進した。今後は研究補助者の雇用、タンパク投与等に2021年度分を当てるなどして、研究を加速させる。
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