研究課題/領域番号 |
20K20497
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 克樹 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 教授 (70243110)
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研究分担者 |
今村 公紀 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (80567743)
春日 健作 新潟大学, 脳研究所, 助教 (70547546)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 老化 / 血漿タンパク / 若返り / サル |
研究実績の概要 |
1)個体の老化の客観的指標となる細胞増殖能の評価:コモンマーモセットの加齢に伴う細胞特性の変化について、皮膚線維芽細胞の増殖能に着目して検証を行った(新生児~老齢:14個体)。老齢個体では、幼齢個体や若齢個体に比べて増殖能が低下していることが確認できた。現在、TIMP2投与の増殖能への影響を検討している。2)血液採取:マーモセット6個体から採血し、マーモセットの血液中Aβ分子種(Aβ38、Aβ40、Aβ42)を測定するにあたり、採血条件の検討を行った。添加する抗凝固剤としてEDTA-2NaとEDTA-2Kを比較し、また採血方法としてシリンジと真空採血管による採血を比較した。脳内アミロイド沈着の指標であるAβ42/Aβ40比は、抗凝固剤および採血方法による差は認めなかった。一方、Aβ分子種のうちAβ38はシリンジ採血をすると検出できなかった。そのため今後は真空採血管による採血が望ましいと考えられた。また、個体側の因子として、新生児では成獣にくらべ各Aβ分子種の濃度が高く、Aβ42/Aβ40比が低いことが分かった。さらに腎不全個体ではAβ40およびAβ42濃度が上昇している可能性が示唆され、今後、結果の解釈の際に注意が必要である。また、Aβ分子種を、5頭から得られた脳脊髄液を用いて測定した。今回の検討ではいずれの個体でもAβ38、Aβ40、Aβ42は測定感度以上で定量可能であった。今後年齢による差を検討する。3)認知機能評価:マーモセット6個体で、新たに開発したGO/NO-GO課題を訓練し、若齢個体と老齢個体における成績を比較している。4)脳機能評価:さまざまな年齢のマーモセット脳のMRI画像を取得して比較している。5)骨密度測定装置(DXA)を用いた骨密度・体脂肪率等の評価:年齢による骨密度の減少が見られることが明らかになった。6)運動機能評価:今年度の進展はあまりなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク投与前のデータが取得できた個体から、TIMP2を投与し、前後での比較を進めた。2023年度にさらにデータ取得を進め、解析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
上述の6つの項目を中心として、タンパク投与前のデータ取得を終えた個体から、順番にタンパク投与を開始していく。特に、全体的な活動量・脳機能・細胞増殖能でどのような変化が見られるのかを重点的に解析する。引き続き、分担研究者の今村公紀博士に、細胞増殖能の評価を推進してもらう。分担研究者の新潟大学春日健作博士に、血液・脳脊髄液成分を分析してもらう。脳機能の評価に関しては、鴻池菜保博士にMRI計測と脳波実験で協力してもらう。新潟大学の伊藤浩介准教授にも協力を依頼して、脳波を用いた脳機能計測では、物質投与の前後において、視覚刺激(同種他個体の顔写真等)および聴覚刺激(純音や他個体の鳴き声等)に対する誘発電位の大きさや潜時などを、投与前後で比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
適当な年齢の個体が予想より手に入らなかったため。また、新たに新潟大学の春日健作博士に分担研究者に入ってもらい、血液成分や脳脊髄液成分の分析の打ち合わせや方法の検討に時間がかかったため。今後は脳波実験、分析等に係る消耗品およびタンパク投与等に当てるなどして、研究を加速させる。
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