研究課題/領域番号 |
20K20499
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
戸田 聡 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (20575906)
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研究分担者 |
勝又 悦子 同志社大学, 神学部, 教授 (60399045)
林寺 正俊 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60449361)
宮嶋 俊一 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80645896)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教学 / 聖典・正典 / 仏教 / キリスト教 / ユダヤ教 |
研究実績の概要 |
第2年度も第1年度と同様、研究会合を着実に重ねていくことができ、研究代表者・分担者が扱っている個別宗教(仏教・ユダヤ教・キリスト教)以外の宗教の状況についても学ぶことができたことは、当初の計画どおりの進展だったと言うことができる。 但し、比較宗教教典研究という、本研究計画がそもそもの立ち上げを企図している当の研究「分野」(とあえて言うとして)に即して言えば、他の諸宗教に関して知見を得ることによって、問題の困難さが浮き彫りになったと言うことができる。 より具体的に言えば、近代日本の新宗教中の代表例と評しうる天理教との関連では、聖典の形成という事態が、教祖自身の言動或いは行動に基づく形で進展するということが(仏教やキリスト教の場合と異なり)必ずしも見られず、むしろ、教学の必要(及び、そのような体制整備によって、明治政府から一人前の宗教と認められるという差し迫った目的)に鑑みて、教学を念頭に置いた「教典」(これは天理教自体の用語法によっており、本研究計画が念頭に置いている「教典」とはやや意味が異なる)が聖典(これまた天理教自体の用語法によっており、本研究計画が念頭に置いている「教典」はむしろこの意味の聖典に近い)に先だって成立するという事態が見られた。つまり概念規定の妥当性に関する反省が求められたと言える。また、ゾロアスター教やインドの民族宗教(あえて言えば、バラモン教)との関連では、教典となるものの内容は古くから存在するがそれが文字化されない時期が長く続いたという、それ自体は既知ではある問題が改めて突きつけられることとなり、この事態をどう織り込んで比較宗教教典研究を推進していくかについて、今なお暗中模索の段階にあるということができる。 但し、この暗中模索は元々必要な経過点だと言うことはできるのであり、その意味では本研究計画は第2年度も着実な進展を遂げたと言えるのではあるまいか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】欄に「着実に」と記したように、平均2か月に1回ないしそれ以上の頻度で研究会合をオンライン実施してきており、その間議論を重ねるなどして、それなりに研究の蓄積はできてきたと言ってよい。特に、第2年度の後半には研究代表者が、比較宗教教典研究に関して所属大学の紀要に、本研究計画の研究会合の議論をも踏まえて或る種のまとめを発表しており、かくて、実施可能なことの積み上げは一応できてきている。但し、これまた上記【研究実績の概要】欄に記したように、問題の困難さも、本研究計画を開始した時点よりは一層明確になってきており、残りの1年、研究の歩をどのように進めるかについては、思案が一層必要になりつつあると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
比較宗教教典研究という企ては、従来から萌芽は諸処で見られたものの、これまでのところ、誰によっても本格的に推進されるには未だ至っていない企てだと言ってよく、それがそもそも3年或いは5年といった限られた期間で一応の輪郭を整えるかどうかは決して自明でない。という状況下で、本研究計画自体が最後の年度となる第3年度に立ち至ったことに鑑みれば、いわゆるシンポジウムのような、成果物が比較的明瞭にわかる場合に実施するのが適当である形式を用いるのは、本研究計画の場合必ずしも適当でないのではないか、という議論が代表者・分担者の間で行なわれた。その結果、当初の予定と異なり、最終年度の後半に実施を予定していたシンポジウムは行なわずに、代えて言わば「公開研究会合」とでもいったものによって、本研究計画が約3年間考えてきたものを言葉にし、かつそれに対して他の研究者たちからの検討・批判を仰ぐ、という機会を設けるのが適当なのではないか、という考えに至った。この「公開研究会合」には、研究代表者・分担者の参加はもちろんのこと、それ以外にこれまでの研究会合でゲストスピーカーとしてご参加いただいた方々にも極力参加をお願いして、それら諸宗教研究者をも交える形で、これまでの比較宗教教典研究立ち上げの試みの到達度、問題点、そしてその今後の成否などに関して、忌憚ない論評並びに意見交換を行なうことを目ざしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナ禍が引き続く中で、当初予定していた費目のうち特に旅費などの執行が予定どおりに行かなかったことなどが、次年度使用額が生じた理由であり、次年度は研究計画最終年度となるため、仮に同様に旅費執行が難しい場合には、書籍購入などといった物品費を増額するなどして予算の効率的な活用(すなわち執行)に努めることとしたい。
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