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2021 年度 実施状況報告書

東南アジアへ拡散したオーストロネシア語族の土器・埋葬文化に関する学際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K20504
研究機関国立民族学博物館

研究代表者

小野 林太郎  国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (40462204)

研究分担者 田中 和彦  鶴見大学, 文学部, 准教授 (50407384)
竹中 正巳  鹿児島女子短期大学, その他部局等, 教授 (70264439)
日下 宗一郎  東海大学, 海洋学部, 特任講師 (70721330)
片桐 千亜紀  九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (70804730)
山極 海嗣  琉球大学, 島嶼地域科学研究所, 講師 (80781202)
Matthews Peter  国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 教授 (70281590)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワードオーストロネシア語族 / 土器文化の復元 / 葬墓制 / 琉球列島 / 先島諸島 / 東南アジア / 東インドネシア / フィリピン諸島
研究実績の概要

本年度に計画していたフィリピン、およびインドネシアでの海外調査(発掘)はいずれもコロナの影響により実施することができなかった。そこで今年度も、インドネシアにおいてはこれまでの研究・発掘調査により収集されていた新石器時代以降におけるオーストロネシア語族の土器や埋葬文化に関わる考古学的資料の分析と整理を積極的に進めた。またオーストロネシア語族集団が東南アジアからさらに移住したオセアニアにおける考古学的資料についても、これまでの研究で収集されてきたミクロネシアを中心とする考古資料の分析や整理を進めた。
インドネシアの考古資料においては、鋸歯印文土器の詳細に関するデータを整理し、これらの成果の一部を学術論文として投稿するための執筆準備を進めた。また比較の視点から、東南アジアやオセアニアの熱帯島嶼環境と類似性の高い、亜熱帯島嶼となる琉球列島のうち、新石器時代期に台湾を起源とするオーストロネシア語族の土器文化の影響を受けた可能性のある先島諸島に注目し、その中心的位置を占める宮古島と石垣島での発掘調査を実施した。今年度の発掘では、オーストロネシア語族の移住・拡散が進んだ新石器時代期とほぼ平行期と推測される時期の文化層を石垣島で確認したほか、宮古島においては年代はまだ不明だが、かなり古いと推測されるミクロネシアに類似する土器片を発見した。
その他にやはり初期オーストロネシア語族の移住期と並行する遺跡として、波照間島の下田原貝塚遺跡に注目し、この遺跡から1980年代に出土した魚骨の再同定分析を進め、当時の人類集団による漁撈活動や漁撈戦略の復元にもアプローチし、オーストロネシア語族による八重山諸島への拡散問題への解明のほか、この島嶼域へと移住した人類集団の土器・埋葬文化についての考古学的資料の収集に着手することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要でも指摘したように、本年度はコロナによる影響により、当初予定していたインドネシアやフィリピンでの新たな発掘調査を含む海外研究は実施することができなかった。その一方で、これまでの当該地域での発掘により収集済みであった未分析の考古・人類学的資料の分析を新たに進めることができた結果、先行研究ではほとんど論じられてこなかった新たな土器文化や埋葬文化に関する知見やデータを整理することができた。またその成果の一部についてはすでに論文投稿しており、次年度も継続して論文公表を展開できる段階にある。さらに新たに比較的視点の追求から、コロナによる影響が海外に比べてより限定的な、日本国内の琉球列島を対象とした遺跡の発掘を実施でき、想定以上の成果を得ることができた。これらの成果も考慮した結果、当初の計画からは大きな変更を余儀なくされたものの、研究全体としてはおおむね順調に進展できたと評価した次第である。

今後の研究の推進方策

次年度におけるコロナの状況にも大きく左右されるが、対象としているインドネシアやフィリピンでコロナがある程度に収束した場合は、計画通りに当該地域での新たな遺跡発掘を実施する予定であり、現地におけるカウンターパートとの調整や準備もできている。しかし、もし次年度においてもコロナが十分に収束せず、海外調査が困難となった場合には、新たに比較的視点より琉球列島にて開始した遺跡調査をより本格的に展開する計画である。とくに今年度に実施した宮古島や石垣島での調査に加え、下田原貝塚遺跡のある波照間島での考古学的調査の実施も視野に入れている。
またインドネシアやフィリピンでの新たな発掘調査をせずとも、これまでの未分析資料の分析や再分析を進めることで、新たな知見やデータの収集・整理・公表にも努める計画である。

次年度使用額が生じた理由

今年度はコロナの影響により計画していたインドネシア・フィリピンでの海外調査が実施できなかったことが原因である。このため次年度においては、コロナが収束した場合は予定していた当該地での発掘を含めた海外調査を実施する計画である。また万が一、次年度においてもコロナが収束せず、海外調査の実施が不可能となった場合は、比較の視点から新たに開始した琉球列島での発掘調査を継続しつつ、インドネシア・フィリピンにおいてはこれまでに得られている考古資料の分析や再検討を進める計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 「タケ仮説」再考 ―ウォーレシアにおける植物利用からみた石器の機能論2022

    • 著者名/発表者名
      小野林太郎・リクザー・フエンテス・中谷文美・金谷美和・上羽陽子
    • 雑誌名

      『国立民族学博物館研究報告』

      巻: 46(3) ページ: 1-124

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 「東ミクロネシアにおける人類の移住年代と貝利用―ポーンペイ島での最近の発掘成果より」2022

    • 著者名/発表者名
      小野林太郎・山野ケン陽次郎・片岡修・Jason Barnabas・長岡拓也・片桐千亜紀・山極海嗣
    • 雑誌名

      『東南アジア考古学』

      巻: 41 ページ: 57-72

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] サピエンスによる更新世期の島嶼移住と渡海に関する一考察:ウォーレシア・琉球列島における事例から2022

    • 著者名/発表者名
      小田 静夫・小野林太郎
    • 雑誌名

      『東南アジア考古学』

      巻: 41 ページ: 93-109

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of bone and lithic technologies by anatomically modern humans during the late Pleistocene to Holocene in Sulawesi and Wallacea.2021

    • 著者名/発表者名
      Ono, R, R. Fuentes, A. Noel, O. Sofian, Sriwigati, N. Aziz, and A. Pawlik
    • 雑誌名

      Quaternary International

      巻: 596 ページ: 124-143

    • DOI

      10.1016/j.quaint.2020.12.045

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Inferring human activities from the Late Pleistocene to Holocene in Topogaro 2, Central Sulawesi through use-wear analysis.2021

    • 著者名/発表者名
      Fuentes,R. Rintaro Ono, Nasrullah Aziz, Sriwigati, Nico Alamsyah, Harry Octavianus Sofian, Tatiana Miranda, Faiz, Alfred Pawlik
    • 雑誌名

      Journal of Archaeological Science: Reports

      巻: 37 ページ: 102905

    • DOI

      10.1016/j.jasrep.2021.102905

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 「漁撈・狩猟活動からみたサピエンスによる島嶼適応 ―ウォーレシアの事例から」2021

    • 著者名/発表者名
      小野林太郎
    • 学会等名
      生き物文化誌学会大会
  • [学会発表] 「下田原貝塚と八重山諸島における先史漁撈の再検討」2021

    • 著者名/発表者名
      小野林太郎、片桐千亜紀、大堀 皓平、クララ・ブランジェ
    • 学会等名
      動物考古学会大会
  • [図書] 図説 世界の水中遺跡2022

    • 著者名/発表者名
      小野 林太郎、木村 淳
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      グラフィック社
    • ISBN
      4766135318
  • [図書] 『モノ・コト・コトバの人類史-後藤明先生退職記念論集-』2022

    • 著者名/発表者名
      大西秀之編
    • 総ページ数
      382
    • 出版者
      雄山閣
    • ISBN
      978-4639028338
  • [図書] 『コモンズとしての海』(『海とヒトの関係学』第5巻)2022

    • 著者名/発表者名
      秋道智彌・角南篤編
    • 総ページ数
      279
    • 出版者
      西日本出版社
    • ISBN
      978-4908443695

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公開日: 2022-12-28  

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