• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

自然の権利から見た水ガバナンスの求心力

研究課題

研究課題/領域番号 20K20505
研究機関筑波大学

研究代表者

松井 健一  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50505443)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2025-03-31
キーワード自然の権利 / 水ガバナンス / アメリカ最高裁 / 水法
研究実績の概要

この研究は、自然の権利に関連した水ガバナンス理論の20世紀から今日までの発展過程を明らかにしようとするものである。自然の権利という考え方は、1972年にアメリカの弁護士であったクリストファー・ストーンが、「木は原告適格性を持つべきか」という論文を法律学の学術誌に掲載したことが発端だと言われいる。その翌年、アメリカの最高裁が「シエラクラブ対モートン」事件で、この意見を引用し、判事の一名がほぼ同意する意見を出した。その後、ハワイでも絶滅危惧種についての裁判で動物を原告として勝訴するなど、国内外の法曹界に大きな影響を与えてきた。この頃から、河川へも原告適格性を求める動きが始まり、その結果近年ではニュージーランドの法律でワンガヌイ川を法人とする法律が成立した。また、バングラデシュの地方最高裁においても、バングラデシュに流れる河川全てを法人として認める判決が出された。
この研究は、こうした自然の権利を考えた水ガバナンスが国際的に展開してきた求心力を探るのが目的である。そのため、採択年度のR2年は、採択発表がコロナ禍の影響で夏頃にずれ込んだが、その後次のような活動を行なった。(1)自然の権利理論の発祥地であるアメリカにおいて、どのような法律文化と社会、倫理的背景で自然物への法律的概念が発達したのか、特に水法や水利用に関わる法律・倫理概念の発展について文献調査を行なった。(2)アメリカの弁護士で昨年度新たに水法に関する最高裁判決の著書を出版したJames H. Davenport氏と8回メールで意見交換を行った。(3)研究用のデータベースを作成し、複数の個人コンピュータからデータアクセス・入力できるようにするデータ共有システムを更新した。(4)可能な限りオンラインでアクセスできる情報を収集した。コロナ禍の影響で、申請時に予定していたアメリカでのデータ収集の代替手段である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍の影響でR2年度の4月には発表されるはずの採択決定が夏頃までずれ込み、予算が入るのが遅れた。そのため、予算執行において実質半年強の期間である。さらに、コロナ禍が長引く中で、予定していた海外による情報収集が不可能となり、研究のための情報収集や意見交換、関係者へのインタビューなどが遅れている。

今後の研究の推進方策

R3年度は、海外出張が可能かどうかで研究の進捗に大きな影響を与えるだろう。日本のワクチン接種が遅々として進まないことを考えると、アメリカなど接種先進国への入国が困難なことも十分想定できる。これについて、当面国内の自然の権利概念の変遷について情報収集をすることも考えている。特に、奄美大島のクロウサギに関する裁判がこれにあたる。R2年度は、この裁判の原告と連絡をとり、インタビューの了解を得たが、コロナ禍で国内出張さへも不可能だった。そのため、今年は状況が許せば、奄美大島と沖縄に出張し、自然の権利の訴訟に関わった人々へのインタビューをする予定である。さらに、アメリカへの出張が1月から3月に可能になるのであれば、ワシントンDCなどへ出張し、情報収集を行うとともにインタビューも行いたい。

次年度使用額が生じた理由

本研究は、フィールドや文献調査を各年度15日間程度行う計画であった。また、筑波大学へ海外から重要な研究者を招聘し、共同セミナーを開催することが旅費利用の目的だった。さらに、アメリカ・カナダでの水政策に関する学会に参加することを計画していたが、予定していたアメリカ環境史学会等が2022年3月までキャンセルとなった。また、海外からの招聘や調査も、コロナ禍により不可能となった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Determinants of rice efficiency in the upper east region of Ghana2021

    • 著者名/発表者名
      Kofi Kyei, Kenichi Matsui
    • 雑誌名

      Kasetsart Journal of Social Sciences

      巻: 42 issue 1 ページ: 25-30

    • DOI

      10.34044/j.kjss.2021.42.1.04

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Equitable resilience in flood prone urban areas in Sri Lanka: A case study in Colombo Divisional Secretariat Division2020

    • 著者名/発表者名
      Hewawasam Vindya、Matsui Kenichi
    • 雑誌名

      Global Environmental Change

      巻: 62 ページ: 102091~102091

    • DOI

      10.1016/j.gloenvcha.2020.102091

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] How Reliable are Farmers’ Perceptions about Climate Change? A Case Study in the Upper East Region of Ghana2020

    • 著者名/発表者名
      Zakaria Abdul-Razak、Matsui Kenichi
    • 雑誌名

      International Journal of Environment, Agriculture and Biotechnology

      巻: 5 ページ: 16~21

    • DOI

      10.22161/ijeab.51.3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Smallholder Rice Farmers’ Adaptation Capacity to Climate Change in the Bawku Zone of Ghana2020

    • 著者名/発表者名
      Zakaria Abdul-Razak、Matsui Kenichi
    • 雑誌名

      International Journal of Environmental Science and Development

      巻: 11 ページ: 258~262

    • DOI

      10.18178/ijesd.2020.11.5.1259

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The Future Contribution of Demand Side Management to Solving Kenya’s Energy Insecurity Problems2020

    • 著者名/発表者名
      Kiprop E.、the Graduate School of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba 305-8572, Japan、Matsui K.、Maundu N.
    • 雑誌名

      International Journal of Environmental Science and Development

      巻: 11 ページ: 111~115

    • DOI

      10.18178/ijesd.2020.11.3.1235

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Drivers of environmental conservation activities among rural women around the Kakamega forest, Kenya2020

    • 著者名/発表者名
      Ondiba Hesborn Andole、Matsui Kenichi
    • 雑誌名

      Environment, Development and Sustainability

      巻: NA ページ: 1~13

    • DOI

      10.1007/s10668-020-01077-2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [備考] Matsui Laboratory

    • URL

      http://www.envr.tsukuba.ac.jp/~envethic/index.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi