研究課題/領域番号 |
20K20505
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松井 健一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50505443)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 自然の権利 / 水倫理・権利 / 先住民族 |
研究実績の概要 |
2023年度は、主に以下の三項目に関する研究活動と実績を出した。 (1) 国際的な研究者との本研究課題に関するネットワークの作成:2024年1月にカナダのアルバータ大学Allen Good教授、ニュージーランドのカンタベリー大学Elizabeth Mcpherson准教授、オランダのAMS InstituteのArjen van Nieuwenhuijzen准教授を招聘し、筑波大学のSUSTEPプログラム主催として特別セミナーを行なった。Good氏とMcpherson氏と自然の権利の日本での事例に関するフィールドワークを奄美大島で共同で行なった(2月)。この際、2024年度にMacpherson氏とニュージーランドでの共同フィールドワークをすることを合意した。 (2) 国内・海外での研究調査:2023年9月にオランダとドイツでライン川河口と中流域の越境水ガバナンスに関する情報を収集した。アムステルダムでAMS Instituteを訪れ、世界遺産における近年の洪水・旱魃問題の情報、ハーグではハーグ市庁を訪れ、市内の地下水塩化問題対策や災害対策の情報、デルフトではデルフトラント水委員会のhoogheemraadであるStijn van Boxmeer氏にインタビューしこの水委員会の歴史や運営に関わる情報を収集した。ドイツでは、コブレンツにあるRhine River Commissionを訪れ、この委員会のAdrian Schmid-Breton氏にインタビューをしながら洪水問題や水位の問題などに関する情報を収集した。 (3) 学術論文の掲載と国際学会での発表:イギリスのRoutledge出版社との間で松井の研究成果を書籍で発表するための交渉を始めた。企画書をすでに提出し、大まかな合意を得た。他にもガーナとスリランカに関するこれまでの研究成果を論文として査読入学術誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、研究計画に明記したニュージーランドやカナダの研究者との新たな連携と将来的な共同研究の可能性を見ることができた。また、Routledgeとの書籍の出版契約へも大きく近づいた。2024年度に更なる発展ができる大きな足がかりができたと言って良いだろう。さらに、学会誌への掲載論文も5本出した。国際学会発表については、指導するポストドクター研究者をはじめ18回アメリカやオーストラリア、オンラインで行った。これらによって、国際的な認知度は非常に高まっており、かなり頻繁に多くの国から研究指導を志望するメールが届いている。また、上記イギリスの出版社との出版交渉についても、先方から松井の業績に基づいて委託したいという依頼が来ている。 一方、(1)を選ばなかった理由としては、エフォート率的に本課題研究のための十分な時間を得られていない点を挙げておきたい。筑波大学での学務や新たな事務処理要求が非常に多くなってきている。学内の上司からは24時間体制で対応するのは仕方がない、とさえ言われている。論文作成には一定のまとまった時間が不可欠である。もう少し時間があれば、論文を年間10本程度、書籍を2.3年内に一冊というペースも可能であるが、論文数は前年度より若干少なくなった点が残念である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、Routledgeとの出版契約を交わし、次年度中の出版・カタログ掲示を目指す。また、近年気候変動関連だけでなく生物多様性やプラごみ対策などの国際会議において、島嶼国やデルタ地域の影響力が高くなっている。こうしたことを鑑み、水ガバナンスや災害対策に関するデータを広域的に収集し、書籍や学術論文作成用のデータとしたい。研究者交流についても、2023年度に築いたニュージーランドの新たな関係を土台に拡大させたい。ニュージランドの本研究課題に関する情報は、意外にニュージーランドへ行かないと得られないものが多いため、出張を行い情報を拡充する。また、本研究課題の申請書に書いたバングラデシュの事例について、コロナの影響等でフィールドへ行けていなかったが、今年度は調査を行い現地でのインタビューなども計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の3年間に旅費が使用できなかったため、3年分の旅費を消化しきれなかった。しかし、2023年度はかなり3年間のギャップを縮めることができた。
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