研究課題/領域番号 |
20K20516
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
小山 義徳 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90546988)
植阪 友理 東京大学, 高大接続研究開発センター, 准教授 (60610219)
深谷 達史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (70724227)
田中 瑛津子 名古屋大学, 博士課程教育推進機構, 特任助教 (10754947)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | カリキュラム空間 / 思考能力の育成 / 自己調整学習 / カリキュラム・デザイン / カリキュラム・マネジメント |
研究実績の概要 |
初年度の主な目的は、学習者のカリキュラム空間についてよりよく理解し、それらを測定する妥当性のある尺度を開発することであった。コロナ禍でもオンラインを駆使し、海外の共同研究者も含めて、メンバー全員で議論する時間を設け、様々な研究を開始した。可能な場合には対面でのミーティングも行った。 これまでの研究成果としては以下のようなものが挙げられる。(1)小中高における教員たちを対象として、学習成果を十分に挙げられていない生徒に対する指導や、指導に関する信念を調査した。予備調査から、高校教員は生徒同士を交流させるような指導法をあまり用いておらず、そのことが生徒の思考スキルの発達に影響を及ぼしている可能性が示唆された。(2)スーパーサイエンスハイスクールを対象とした調査も行い、探究型学習に関する指導法の違いが、生徒の探究学習や批判的思考法、学業成績に及ぼす影響を検討した。(3)海外の共同研究者達と共に、大学等高等教育における教員が大学生および大学院生レベルにおいて、どのような思考スキルを育てることを重視しているのか、さらにはそれらを育てるためにどのような工夫を行っているのかを検討する調査を開始した。日本において行うとともに、デンマーク、スペイン、フランス、オーストラリア等でも実施するための準備を進めている。(4)文献のレビューを行い、カリキュラム空間や時間がどのように学習者のモチベーションに影響を与えるのか、特に、指導中の課題の与え方を変化させるよって、どのくらいモチベーションが改善されるのかを検討した。(5)さらに、大学院生とその学習支援を行う支援者に対するインタビュー調査を行い、カリキュラム空間の有無が大学院生の学習や研究の進展に影響を与えるのかについて検討し始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
このプロジェクトについては随分とよいスタートを切る事ができた。八月に公費交付の知らせを受けたため、たった7カ月しかプロジェクト推進の期間がなく、しかもコロナ禍でもあったというのに。今年度も計画通りに研究を進ませる事ができるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる本年度は、カリキュラム空間の効果や諸変数との関連性を実証的に示すことを目的とする。より具体的には、生徒や学生のカリキュラム空間を実証的に測定し、それらが学習に関わる思考や行動信念、成果等に及ぼす影響を検討する予定である。本研究を実施することで、不適切なカリキュラム空間の例(学生が学ぶべき内容があまりにも多く、必要な課題や研究に追われるような環境等)を明らかにすることにもつながる。また、調査、インタビュー、授業観察の実施とは別に、カリキュラム空間を増減させることが学生の思考に及ぼす影響を検討する実験を行う予定である。この研究では、学生がどのような思考方略をとるのか、学習内容をどの程度振り返るのか、学習に関わる思考や判断をどの程度行うようになるのかを検討する。本プロジェクトでは、授業中の思考スキルの育成のみならず、学生が自ら勉強して自己調整しなければならない状況(例えば家庭での宿題等)における思考スキルの育成についても射程に入れていく さらに、初年度に開始したカリキュラム空間を理解するための尺度作りは継続する。この研究では、大学等の高等教育段階におけるカリキュラム空間を測定できる尺度を開発する。この尺度をオンライン上で実施、授業中のカリキュラム空間や、自己調整学習、批判的思考などについて検討する。この調査を通じて、十分なカリキュラム空間がないために問題が発生していることが示された場合には、それらを解決するための支援のあり方についても示唆を得ることを目指す。また、日本においてカリキュラム空間が重要であることを示すのみならず、デンマーク、フランス、スペイン、ドイツ、オーストラリアの大学の共同研究者達と共に密接に連携を取りながら、国際的にも重要な視点であることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の生じた主な理由は、新型コロナにより、予定の研究ができなかった事にある。 研究調査のみが可能であり、対面でのデータ収集は、実験の参加者と我々両社ともに危険にさらされることになるため、そういった実験を一切行う事ができなかった。また、海外(デンマーク、フランス、ドイツ、オーストラリア)の共同研究者を訪問し一緒に仕事する機会を持つ事も、去年一年間は不要不急の研究目的の渡航が許されない状況にあり、不可能であった。2021年後期からは、研究計画にある実験調査、そして対面でのデータ収集を行う事が可能になると思われる。これも依然として、新型コロナの状況次第とも言えるが、その時には少しは改善している事を願っている。 また、可能であれば年末か年明けごろを目途に、海外の共同研究者達の訪問も、引き続き行うことができるといいと思っている。同時に、研究計画の調整を行うことで、実験参加者へのオンラインインタビューや調査を駆使し、必要なデータ収集を執り行うことができるようにしていく計画である。
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