研究課題
ロブスターアイ光学系を製造する際には、主に、レーザーによる3次元微細加工、アニーリング、磁性流体研磨、X線の反射率を向上させる内壁のコーティングの各工程を経る。それぞれにおける製造パラメータの調査を、製造担当のウシオ電機社と実施した。その結果として、レーザー加工直後と比較して、研磨後の表面粗さを従来の約1/20に低減できる事を確認した。また、デザインを工夫することで加工時のクラックの発生を抑えることに成功し、その結果としてエックス線光学系としての開口率を50%にまで拡張することに成功した。金沢大学では、ロブスターアイ光学系の性能評価を行うことを目的に、約5メートルのX線ビームラインを構築した。真空環境下で1.5から8.0キロ電子ボルトのX線を照射できるシステムとなっている。広い視野を確保するロブスターアイ光学系に対応できるよう、角度方向に回転できる微動ステージと、焦点方向の距離と結像性能の関係を評価できるようXYステージを導入した。真空環境下でこれらのシステムを駆動することと、真空チャンバ内でCMOS撮像検出器を動作できること、そしてロブスターアイ光学系の結像を確認した。これにより、基本的なX線評価システムを構築できたと言える。また、今後の開発検証計画を策定し、次年度の夏までにロブスターアイ光学系の1号機を完成させ、その特性評価を実施した上で、同年度内に設計を最適化した2号機を製造する予定である。
2: おおむね順調に進展している
ウシオ電機社によるロブスターアイ光学系の製造プロセスの検討と、大学でのX線評価システムの構築のいずれにおいても、当初の計画通りに進行できている。特に、従来の課題であった光学系の「内壁の粗さ」を劇的に改善することができたことが製造における重要な進展であった。ただし、1つのロブスターアイ光学系を製造するために要するアニーリングの時間が長く、将来的な量産体制を構築するという目標において課題が見つかっている。また、X線ビームライン評価システムでは低エネルギーX線を使用し、かつX線光学系の結像性能に見合った微動調整機構を導入する必要があることから、真空チャンバの製造や内部の光学ベンチ、微動ステージ、評価方法について詳細な検討を重ね、所望の性能のビームラインを構築することができた。現時点では、焦点距離方向と水平方向の微調整機構が導入できており、高さ方向(Z軸方向)は次年度に導入する予定である。以上の理由から、おおむね順調に進展していると言える。
令和3年度の夏頃までに、ロブスターアイ光学系の1号機を製造し、X線ビームラインによる性能評価を実施する。日常的には本研究で新設したビームラインを用いるが、最終的な評価にあたっては宇宙科学研究所にある30メートルのX線ビームラインを使用することも検討している。これまでに販売されている海外製の製品と比較して、結像性能、反射効率、有効面積等の基本情報を獲得し、必要があればデザインや製造pらメータをより最適化した2号機を製造する。金沢大学のX線ビームラインにZ軸ステージを導入することで、将来的に複数のロブスターアイ光学系を配列したときの試験を実施できるように拡張する。
真空チャンバ内のX線評価において微動ステージを導入してきたが、Z軸ステージ2件は経費総額の都合上、導入することができなかった。令和3年度の予算と合わせて導入する予定である。
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