研究課題/領域番号 |
20K20531
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
巨 陽 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60312609)
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研究分担者 |
徳 悠葵 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (60750180)
木村 康裕 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70803740)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 原子配列 / 結晶構造 / 力学特性 / 電子風力 / 金属材料 |
研究実績の概要 |
(1)結晶組織における電流流路の可視化 独自に開発したナノ分解能を有する、試料の表面形状と電気伝導率を同時に計測できるマイクロ波原子間力顕微鏡を用いて、試料の各結晶面や結晶粒、相組織の導電率マッピングを実現した。また、試料に通電しながら、電流により発生するクーロン力が探針と試料表面間の原子間力に及ぼす影響を計測し、結晶組織における電流流路の可視化を実現した。 (2)原子配列および転位の可視化技術の確立 電子風力による原子配列および結晶構造変化の動的挙動を可視化するため、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)によるその場観察を実施した。独自のTEMホルダーを開発し、高分解能観察に必須の厚さ10 nm以下の薄片試料への電流印加を実現した。また、TEMホルダーには2軸傾斜式を採用し、像観察のみならず複数方向からの電子回折パターンを取得することにより、電流印加によって変化する原子間距離・結晶面・結晶構造の挙動を明らかにした。 (3)転移運動の数値解析技術の確立 電子密度分布を考慮した密度汎関数理論に基づく原子スケールでのシミュレーションと分子動力学シミュレーションを融合し、電子風力による転移の運動を解析できるマルチスケールシミュレーション確立した。また、マルチスケールシミュレーションを用いて、電子風力が誘起する転位の運動による小傾角粒界の形成を系統的に解析し、小傾角粒界の形成による結晶粒の微細化機構を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで予定されていた研究計画は順調に実施されており、さらに、当初予定されていない転移運動の数値解析技術を新たに確立した。加えて、マルチスケールシミュレーションを用いて、電子風力が誘起する転位の運動による小傾角粒界の形成を系統的に解析し、小傾角粒界の形成による結晶粒の微細化機構を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)電子風力によるナノスケール組織制御機構の解明 電子の密度や速度、作用時間、作用回数の条件と、各合金中の原子の移動や再配列との関係を定量的に評価することにより、電子風力による結晶構造改変の機構を明らかにする。最終的に、電子風力による材料内組織の制御に関する理論モデルを提案する。 (2)革新的力学特性の発現指針の確立 TiAl合金の各種力学特性を最大限に向上できる高密度電流印加条件の最適化を実現し、いままで実現できなかった高強度、高延性、高靭性などの革新的力学特性発現手法を確立する。さらに、材料の原子種類、結晶構造、相組織に基づく革新的力学特性や力学特性のトレードオフを打破できる普遍的な指針の発現に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入予定の部品の納期が予想外の原因で遅延され、次年度の予算で購入する予定である。
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