研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュのライブイメージング技術の開発から、その画像処理に基づく毛細血管網3次元構造の再構築、その内部の血行動態のシミュレーションに加えて、ゼブラフィッシュ体内での赤血球や外部から導入したナノ粒子の挙動の解析までを実施した。シミュレーション技法についても、最も計算負荷が小さいものの精度は劣る1次元モデル、血管構造の3次元性は考慮するものの血液を均一流体として扱う3次元シミュレーション、さらには最も計算負荷は高いものの血液中の赤血球と血漿の相互作用までを陽に考慮する散逸動力学法までの技法を系統的に実施し、それらの結果を生きた生体モデルであるゼブラフィッシュのライブイメージングにより検証することを世界に先駆けて成功した。その結果、最も単純な1次元モデルであっても血管網のリモデリングに伴う血流分布の変化を定性的に予測することを示す一方で、散逸動力学法を用いることにより、分岐部や複雑血管形状における局所の赤血球の変形までを正確に再現できることを示した。さらに、物理法則を考慮した深層学習により、ライブイメージングの画像から血行動体を予測する新たなアルゴリズムを開発し、その推定性能の検証までを実施した。以上の技術開発により、血液中に含まれる赤血球や人工ナノ粒子の動力学を計算機上で再現し、ドラッグデリバリーに応用するための基盤ツールの構築を完了した。また、ナノ粒子表面にコーティングしたPEGの長さを系統的に変化させることにより、ゼブラフィッシュ体内におけるナノ粒子の血液中の滞在時間に与える影響を定量評価し、適切にPEGの長さを制御することにより血管内皮細胞による取り込みを抑制し、より長時間血液中に滞在させることが可能となり、ドラッグデリバリーシステムの開発に向けて極めて有用なデータを取得した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Development
巻: in press ページ: -
10.1101/2023.08.16.553481
Developmental Cell
巻: 58 ページ: 1-15
10.1016/j.devcel.2022.12.013