研究実績の概要 |
本研究では,固相超臨界状態における相変移の解明,機能発現,およびそれによる革新的機能変換材料の創成を目的としており,初年度はホモ遷移挙動の実験的研究と変形挙動の観察を行う予定としている.このため本年度は,磁性形状記憶合金であるNiFeCoGa合金とNiMnGa合金,および非磁性のTi合金を対象に実験的研究を進めた.まず,NiFeCoGa合金については,多結晶からFIBで微小試験片単結晶を切り出し,[100], [110], [111]方位を選び,室温から100℃の範囲で圧縮試験を行った.本合金のヤング率は,[100]で5.3GPa, [110]で7.9GPa, [111]で9.9GPaであった.圧縮方位として,[111]および[110]の場合は,応力-ひずみ曲線における変態ー逆変態ヒステリシスが試験温度によらず見られるが,[001]方位の場合には,試験温度の上昇に伴いヒステリシスが減少し,353Kではほとんど消失する現象が確認できた.これにより,20ミクロン程度の微小材料でも,[001]方位で超臨界状態で遷移することが確認できた. 次に,NiMnGa合金については,本研究に適した合金組成の探索を行った.また,画期的センサー・アクチュエータの開発のために,NiMnGa合金単結晶状粒子を用い,シリコーンやエポキシと複合化した複合材料も作製し,粒子配列状態が及ぼす磁気的性質についても検討した.これについては,次年度,変形挙動についても研究を進める予定である. Ti合金については,Ti-4Au基共析近傍合金を中心に研究を進め,CrやFe添加で形状記憶・超弾性効果が得られることを見出した.以上の合金については,以後,微小試験片を作製し,NiFeCoGa合金同様に圧縮試験を行い,超臨界状態について検討を進めることを計画している.
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