研究課題
本研究では、水の熱化学分解について検討した。酸素キャリアを用いることで反応場を分離し、低温での熱化学分解を行うプロセスを考案した。酸素キャリアについて、熱力学計算によりCeO2系の材料にまず注目し検討を進めた。超臨界水熱合成法により、高活性な(100)CeO2を合成し、その熱還元挙動と、水による酸化挙動を調査した。その結果、還元された(100)CeO2は非常に高い活性を示し600℃以下の低温領域でも、再酸化され、水から水素を生成することが確認された。一方で、熱還元については1000 °C以下の低温での還元を期待したが表面の酸素のみに限られ、水による再酸化を起こすための十分な還元度には至らなかった。そこで、Cu-CeO2の複合化を考案した。低温で熱還元を起こすCuOをCeO2の表面に担持し、評価を行った。その結果、CuOの熱還元は観測されたが、CeO2からCuOへの酸素移動量が十分ではないことが分かった。より高活性な材料を作成する目的でCeO2へのドーピングを検討した。CeO2-ZrO2の有機修飾ナノ粒子の合成を行い酸化還元挙動を評価したところ、低温での非常に高い酸化還元特性が見出された。またMnをドープしたCeO2を合成したところ、非常に高い酸素貯蔵放出量が見出され、その要因が、結晶の局所歪とMnドーパントの分散状態にあることも分かった。これらの複合材料は、還元前処理を行うことで水による酸化と不活性ガス雰囲気での熱還元が繰り返し起こることを確認した。本成果は、水の低温熱化学分解プロセスを構築するうえでの基礎的知見となる成果である。
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ACS Sustainable Chemistry & Engineering
巻: ACCEPTED, IN PRESS ページ: IN PRESS
Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: 96 ページ: 133~147
10.1246/bcsj.20220295
https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/ajiri_labo/index.html