研究課題/領域番号 |
20K20553
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢嶋 赳彬 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (10644346)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | プロトン / 酸化タングステン / パラジウム |
研究実績の概要 |
0.1Vという極低電圧で動作するスイッチングデバイスの創成を目指して、プロトンと相転移材料を利用した新デバイスの研究を行っている。2020年度の研究で、酸化物中のプロトンの揮発性について、基礎的な知見を得ることができた。2021年度は、これらの知見を元に、WO3とPdを用いた2端子素子を作製し、電圧によって固体素子中のプロトンの動きを制御することを目的として、研究を行った。 シリコン基板上にプラチナ電極を作製し、その上にパルスレーザ堆積法でWO3アモルファス薄膜を、電子線蒸着法でPd電極を作製した。この2端子素子を水素5%の雰囲気中で電気特性評価したところ、時間とともに電気伝導性が2桁ほど上昇することが分かった。さらにこの電気伝導性の変化量は、測定時にPd電極に正電圧をかけるか負電圧をかけるかによって、明確に異なり、Pd電極に正電圧を印加したときのみ電気伝導性が大きく上昇することが分かった。これはPdに吸収されたプロトンが、正電圧に反発してWO3中に移動したためだと考えられる。また電気伝導性の変化量を決める閾値電圧がほぼ0Vであったことも、過去の文献からPdとWO3とで水素吸収に関する標準電極電位の差が小さいことと矛盾しない。 さらにPdにわずかにプロトンを吸収させた状態で、2端子間に正負の電圧を印加すると、印加電圧に対応して過渡的に電気伝導性が変化することを確認した。これは電圧によって素子中のプロトンの移動を駆動することに成功したと言える。以上のようにWO3-Pdの2端子素子において、プロトン移動を電圧制御することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたプロトンの電圧制御に成功したため
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今後の研究の推進方策 |
低電圧スイッチング素子の実現に向けて、薄膜の積層構造を駆使したプロトン制御手法を確立し、特に低電圧動作を実現するための要件を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験内容の修正により、本年度ではなく次年度に予算執行時期が変化したため。
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