研究課題/領域番号 |
20K20554
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉川 元起 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70401172)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 嗅覚センサ / 音声 / ニオイ / パターン認識 / 聴覚 / 直感 |
研究実績の概要 |
本研究は、嗅覚と聴覚に共通する「直感性」と「複合性」に着目し、ニオイを音声データに直接変換することにより、従来の嗅覚センサとは全く異なる新たな測定・解析方法を確立することを目的としている。 本年度は、測定対象となる各種ガスやニオイを高精度に測定するために、自動ガス制御-音声測定システムを構築した。はじめに、サンプルバイアルも含めたガス流路全体の容量と、各周波数の音の波長の関係から、測定チャンバーを含む測定システム全体の構造を設計した。こうして解析モデルに基づいて設計された測定系について、有限要素解析を用いて各所におけるガスの流れと音の伝搬様式を検証すると同時に、3Dプリンタを用いた試作と実験を繰り返し行うことで、精密な測定が可能なガス流路系を構築した。こうして精密にデザインされた測定系に対して、複数のマスフローコントローラーと音声測定システムを統合することで、任意の濃度のガスやニオイを精密に測定可能な自動ガス制御-音声測定システムを完成させた。これと並行して、ガスやニオイを測定チャンバー内あるいはセンサ素子上で化学的に変調させるために、ナノ粒子や錯体化合物などを含む機能性感応膜材料の開発を進めた。また、測定の再現性を向上させるために、温度や湿度をはじめとした外乱要因の影響を定量的かつ統計的に検証した。これにより、外乱の影響を大幅に抑える測定条件を確立することに成功し、極めて再現性の高い測定が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自動で精密測定可能な統合システムが完成しただけで無く、化学的変調が可能な機能性材料の開発や測定再現性の向上など、複数の重要な成果が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、高精度測定システムを用いて、各種ガス成分の精密測定を実施する。ここで得られる音声シグナルから、各種ガス成分の特性情報の抽出を試み、ガスの高精度識別を目指す。さらに、これらの測定を簡易的に実施可能なシステムの設計を進め、各種アプリケーションへの適用可能性を検証する。特に、従来の化学センサでは対応が困難であったアプリケーションに対して、どこまで対応できるか調べ、本手法の位置づけを明確にする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験を進めていくうちに、ニオイを音声情報に変換する際に化学的変調を加えることで、より多くの情報が得られることが明らかになった。この化学的変調を行うためには、各種機能性材料をセンサ素子表面に塗布する必要があり、塗布装置を次年度で導入するために一部予算を次年度に使用する事とした。
|