研究課題/領域番号 |
20K20557
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
若狭 雅信 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40202410)
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研究分担者 |
矢後 友暁 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30451735)
吉田 陽一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (50210729)
神戸 正雄 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60705094)
前田 公憲 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70229300)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 同位体濃縮 / スピン化学 / パルスマイクロ波 / パルスラジオ波 / 磁場効果 |
研究実績の概要 |
従来の質量数の差を用いた同位体濃縮とは原理が全く異なる,我々が開発した磁場を用いた同位体濃縮法をさらに発展させ,磁場に加えてマイクロ波 およびラジオ波を用いた新しい同位体濃縮法を開発することを目的としている。具体的には,既存の電子スピン共鳴装置を改良し,任意波形信号発生器(Arbitrary Waveform Generator (AWG))からのラジオ波(RF)を試料に照射できる装置を開発する計画であった。 しかし2021年度,本科研費で購入したAWGを用いて実験を行なったところ,パルスマイクロ波を照射せずとも,磁場中で共鳴する核スピンにAWG-RFを照射することで,ラジカル対の反応を変化させることができることを見出した。この結果は,ラジカル対の三重項状態と一重項状態の変換がラジオ波(RF)によって直接影響されたためと考えられる。これにより選択的同位体濃縮の実現に一歩近づいたと言える。 同位体濃縮の評価に関しては,加速器質量分析による生成物の同位体比測定の準備を進めた。しかし,コロナ感染症の拡大のために,研究分担者との実験が思うようにできなかった。そこで,他の同位体比測定手法についての検討を行ったところ,検出器を2つ持つ特殊な磁場型(セクター型)同位体比測定質量分析装置でも,加速器質量分析と同程度以上の精度で同位体比測定が可能であることがわかった。これらを踏まえて,東大・駒場の磁場型同位体比測定質量分析装置を用いた測定の準備を行なった。 加えて,反応系に関しては,再結合反応速度と散逸速度を考慮したミセル反応系の検討も行い,生成物の分離の高精度化を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症のため,研究者の移動が妨げられ,加速器質量分析による同位体比測定に関する研究を後に回すことにした。他はほぼ計画通りに研究は進行した。具体的には,AWG-RFを照射のみでも反応制御が可能であることを見出した。また,同位体比測定に関しても,加速器質量分析以外での測定法を確立した。Brij35以外のミセルにについてもミセル溶液のケージ効果を調べ,ラジカル対反応の制御と同位体分離の高効率化の目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度 (1)磁場下でのAWG-RF照射による磁気同位体濃縮反応の最適化をはかり,標準サンプル(12Cベンゾフェノンと13Cベンゾフェノン)の過渡吸収測定にる同位体効果の測定を検討する。 (2)上記の反応における反応生成物の実用的に高効率な分離方法を確立する。 (3)磁場型(セクター型)の同位体比測定質量分析装置(東大・駒場)を用いて,標準サンプルの同位体比測定精度を明らかにした上で,反応生成物に対する同位体比測定方法を検討する。 (4)特異なナノ反応場を用いた反応ダイナミクスの制御を検討する。具体的には,ミセルに加えて,イオン液体,およびメソポーラスシリカMCM-41の特異なナノ反応場を利用した反応系に対しても,AWG-RF照射の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため研究分担者との行き来が妨げられ,加速器質量分析による同位体比測定に関する研究を次年度以降に回すことにしたため次年度使用額が生じた。2022年度は新たに磁場型同位体比測定装置を用いた同位体比測定に関する研究も開始するので,これらにも合わせて適切に使用する予定である。
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