研究課題/領域番号 |
20K20557
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
若狭 雅信 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40202410)
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研究分担者 |
矢後 友暁 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30451735)
吉田 陽一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (50210729)
神戸 正雄 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60705094)
前田 公憲 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70229300)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 同位体濃縮 / スピン化学 / パルスマイクロ波 / パルスラジオ波 / 磁場効果 |
研究実績の概要 |
(1)芳香族カルボニル化合物の光誘起電子移動反応に対して,磁場下でのAWG-RF照射効果を過渡吸収で調べた。その結果,散逸ラジカルの収量がRF照射によって減少することを見つけた。このことは,AWG-RF照射によって,散逸生成物中の炭素12同位体(12C)の量を減らせることを意味し,AWG-RF照射によって磁気同位体濃縮が可能であることを初めて実証したと言える。 (2)ベンゾフェノンやキサントンなどのいくつかの芳香族カルボニル化合物の光反応について,生成物の実用的で高効率な分離方法を確立した。高精度の同位体比測定には,サンプル量は少なくても純度が高い(99.99%)必要がある。その為には,高効率な分離方法の確立は不可欠である。 (3)検出器を複数もつ磁場型(セクター型)の同位体比測定質量分析装置(東大・駒場)を用いて,標準サンプル(ベンゾフェノン)中の12Cと13Cの同位体比を種々の条件で測定し,その変化量が±0.2 ‰程度までの微小変化を高精度に測定するための測定条件を見出した。 (4)特異なナノ反応場を用いた反応ダイナミクスの制御を検討した。具体的には,Brij35ミセルに加えて,SDSミセル,イオン液体,およびメソポーラスシリカMCM-41のナノ細孔などの反応場を利用した反応系に対して,AWG-RF照射の効果を調べる前段階の実験として,磁場効果を検討した。同位体の濃縮および生成物の分離には反応場が強く影響する。例えば,スピン緩和を起こす前に反応させる為には,強いケージ効果が必要であり,逆に反応場から生成物を分離する為にはケージ効果を弱いほうが良い。そこで,見かけは均一であるが,反応時間においては強いケージとして働く反応場を見つける必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症のため研究者の移動が妨げられていたが,感染者数の減少時に感染対策を十分にとって同位体比測定に関する研究を実施するなど,ほぼ計画通りに研究は進行した。 具体的には,低磁場下,AWG-RFを照射することでラジカルの収率が変化することを過渡吸収を用いて明らかにした。また,同位体比測定に関しても,13Cと12Cのベンゾフェノンについて,高精度に同位体比を測定できるようになった。Brij35以外のミセルにについてもミセル溶液のケージ効果を調べ,ラジカル対の反応制御と同位体分離の高効率化の指針ができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)キサントン,ベンゾフェノンなどの芳香族カルボニル化合物の光誘起電子移動反応および水素引き抜き反応において,磁場下でのAWG-RF照射効果を過渡吸収で観測し,反応条件等の最適化をはかる。 (2)幅広い反応場における生成物に対する実用的で高効率な分離方法を確立する。 (3)標準サンプル以外の実反応における生成物の高精度な同位体比測定条件を確立する。同位体比測定においては,生成物の分離も合わせてガスマスの使用も検討する。 (4)特異なナノ反応場としてBrij35ミセルに加えて,SDSミセル,イオン液体,およびメソポーラスシリカMCM-41のナノ細孔を用いて,磁場下でのラジカル対の反応に対するAWG-RF照射効果を生成物ベースで検討し,さらに選択的同位体濃縮の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため,2022年度に購入を予定していた機器および試薬の納品の目処が立たなかった。 2023年度に,予定していた示差屈折計等を購入する。
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