研究課題/領域番号 |
20K20557
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
若狭 雅信 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40202410)
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研究分担者 |
矢後 友暁 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30451735)
吉田 陽一 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (50210729)
神戸 正雄 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60705094)
前田 公憲 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70229300)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 同位体濃縮 / スピン化学 / パルスマイクロ波 / パルスラジオ波 / 磁場効果 |
研究実績の概要 |
研究目的であるパルスマイクロ波およびパルスラジオ波を用いた新しい選択的同位体濃縮法の確立を目指して,2023年度は主に以下の研究を行った。 (1)キサントン,ベンゾフェノンなどの芳香族カルボニル化合物の光誘起電子移動反応および水素引き抜き反応において,磁場下でのAWG-RF照射効果を過渡吸収で観測した。さらに,反応条件および照射パルス強度等の影響を詳細に検討し,AWG-RF照射効果の最適化をはかった。 (2)Brij35ミセルに加えて,SDSミセル,イオン液体,およびメソポーラスシリカMCM-41など,幅広い反応場における生成物の実用的な分離方法を検討し,前処理ならびにゲル濾過カラムを用いた高効率な分離手順を構築した。 (3)キサントンやベンゾフェノンなどの13C/12C同位体比標準サンプルの反応に加えて,例えば,有機ケイ素化合物の励起三重項経由の反応における生成物の29Si/28Si同位体比の精密測定方法を検討した。29Si/28Si同位体比測定においては,生成物の分離も同時に行える,ガスクロマトグラフィー質量分析計の使用も検討した。 (4)ベンゾフェノンとフェノールの2分子反応に対して,18O同位体濃縮を目指しての生成物分離を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症のため研究代表者および分担者の移動が妨げられていたが,感染者数が減少してきたので感染対策を十分にとって同位体比測定に関する研究を実施するなど,ほぼ計画通りに研究は進行した。 具体的には,低磁場下でAWG-RFを照射することでラジカルの収率が変化することを過渡吸収を用いて明らかにした。また,AWG-RF照射効果のの最適化を図る事ができた。同位体比測定に関しても,13C濃縮のベンゾフェノンと標準のベンゾフェノンについて,高精度同位体比測定の条件を決めることができた。Brij35以外のミセルなど,種々の反応場にについても反応生成物分離の高効率化の指針ができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)特異なナノ反応場の利用した選択的同位体濃縮:Brij35ミセルに加えて,令和5年度に生成物の実用的な分離方法を検討したSDSミセル,イオン液体,およびメソポーラスシリカMCM-41のナノ細孔を用いて,磁場下でのラジカル対の反応に対するAWG-RF照射効果を生成物ベースで検討し,さらに選択的同位体濃縮の実現を目指す。 (2)種々の反応系を用いた選択的同位体濃縮:29Siおよび33Sについても,磁場効果が観測された反応系を用いて,選択的同位体濃縮を試みる。加えて,生成物分離を令和5年度に検討したベンゾフェノンとフェノールの反応を用いて,核スピンのない18O (0.200 %)を散逸生成物中に濃縮することにも挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため,研究代表および研究分担者間での共同研究が予定通りに行えなかったため物品費等に次年度繰越が生じた。令和6年度には,令和5年度に実施できなかった共同研究を行う予定であり,その経費とする。主に消耗品として使用する。
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