研究課題/領域番号 |
20K20559
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石原 一彰 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40221759)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | アミド / ペプチド / 触媒 / エステル交換反応 / 固体触媒 / メタクリル酸エステル / 脱水縮合反応 / アクリル酸エステル |
研究実績の概要 |
(メタ)アクリル酸エステルはプラスチック原料として大量に合成されているものの、その多種多様なアルコール由来の不飽和エステルの効率的な合成方法の開発については、今なお、各企業が凌ぎを削っている。今回、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)のNa塩がメタクリル酸エスエル合成用の触媒として、そのMg塩がアクリル酸エステル合成用の触媒として優れた機能を持っていることを発見した。 近年、ペプチド医薬品が注目されているが、その合成方法については縮合剤に替わる触媒の開発が急務である。ホウ酸がカルボン酸とアミンの脱水縮合触媒として有効であることは既にわかっているが、ホウ酸の触媒活性は比較的弱く、収率よくアミドを合成するためには高温で長時間反応させる方法が常套手段であった。そのため、この反応条件では単純な化学構造を有するアミド合成に適用できても、熱に不安定なペプチド合成には適用できない。今回、非常に安価なホウ酸の触媒としての機能を詳細に調べてみたところ、敵量のホウ酸がペプチド合成触媒として有効であることが明らかになった。興味深いことにホウ酸の適量は30 mol%であり、それよりも少なくても多くてもペプチドの収率が低下することがわかった。その理由についてはまだ明らかにできておらず、次年度、反応機構の解明とホウ酸由来の触媒設計を予定している。 テトラフルオロホウ酸とモレキュラーシーブスから調製されるゼオライトにアミド縮合反応の触媒としての機能があることがわかった。また、このゼオライト触媒はアミド縮合反応後、回収・再利用可能であることも確認した。しかし、このゼオライト触媒の分子構造については明らかにできておらず、次年度、触媒表面解析を行い、真に有効な固体触媒の開発につなげたい。なお、現在、企業と共同研究契約を結んでおり、様々な条件でゼオライトを合成、評価を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、メタクリル酸エステル用の合成触媒研究をしており、NaBHTに優れた触媒活性があることを発見した。その際、より難易度の高いアクリル酸エステルの合成触媒についても検討してみたところ、Mg(BHT)2が利用できることも発見した。 当初、ペプチド合成用の新規触媒の探索研究を行なっていたが、非常に安価なホウ酸自身に触媒活性があることを発見した。特許性があると判断し、特許出願をした。また、脱水縮合反応で副生する水を除去するためにモレキュラーシーブスを加えて検討していたところ、テトラフルオロホウ酸とモレキュラーシーブスから固体触媒が調製できることを発見し、特許出願した。この発見はセレンディピティーであり、企業との共同研究につながった。
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今後の研究の推進方策 |
エステル交換触媒の開発研究においては、回収・再利用可能な触媒開発を特に重点的に検討したい。また、Mg(BHT)2の真の触媒活性種についてはまだ明らかにできておらず、反応中間体の解析などを通して真に有効な触媒開発を目指す。 ホウ酸を均一触媒に用いるペプチド合成反応の研究においてはホウ素含有中間体の単離・結晶化によるX線結晶構造解析が重要である。また、ホウ酸由来の触媒活性種は単量体とは限らずオリゴマーの可能性も含めた考察が必要だと考えている。触媒活性に重要な化学構造が明らかになれば、触媒設計が可能になる。 ゼオライト固体触媒の研究においては、ゼオライトの合成技術をもつ企業との共同研究を通して、活性ゼオライト表面の化学構造を解析し、真に触媒活性の高いゼオライ触媒を開発する。
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