研究課題/領域番号 |
20K20571
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
天竺桂 弘子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80434190)
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研究分担者 |
佐藤 令一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30235428)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 組織親和的侵入 / Copidosoma floridanum / 多胚性寄生蜂 / 分子擬態 |
研究実績の概要 |
多胚性寄生蜂において、宿主体内への侵入は寄生成功の必須要件である。この侵入において、多胚性寄生蜂の桑実胚は宿主組織に損傷を与えることなく侵入し、むしろ宿主は桑実胚を積極的に迎え入れる。このような組織親和的侵入は、一般的に動物界で広く知られる遠縁種間の急性型移植拒絶反応を回避するユニークな現象で、その仕組みとして分子擬態が示唆されてきた。本研究では申請者らがこれまでに多胚性寄生蜂の胚発生期の遺伝子発現解析で得られた情報を基に、組織親和的侵入の分子メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子のcDNA配列の決定を試みた。はじめに、トランスクリプトーム解析から取得した配列を元にプライマーを作成し、侵入前の桑実胚から作成したを用いて入れ列のクローニングを試みた。PCRで増幅したした配列を検討したところ、さらに5’/3’側が含まれていないことが強く示唆されたため、5’/3’RACEにより全長を増幅し、全長配列を決定した。データベースに登録されている配列と、アライメントにより比較したところ、5’側において配列が異なっていた。このことから、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子には複数のバリアントが存在することが示唆された。翻訳されたタンパク質におけるN末端側が異なると、タンパク質の性質が通常とは異なるため、組織親和的侵入に関与する役割に変化する可能性が考えられた。さらに、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子の転写予測領域について詳細に検討するため、半数体であるオスの成虫からDNAを抽出し、Pacbioを用いてロングリードDNA配列解析を行った。現在このデータを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、Copidosoma floridanumの宿主昆虫の十分な採集ができなかったため、実験内容の変更およびスケールを小さくせざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
組織親和的侵入に関与すると考えられる因子が宿主胚の認識と侵入に関与するかを明らかにするために、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子の抗体と組み換えタンパク質を用いて、宿主胚への侵入が阻害されるかを検討する(侵入阻害実験)。また、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子の転写予測領域について検討するため、本年度取得した、DNA配列解析を引き続き解析する。これにより、組織親和的侵入に関与すると考えられる因子の機能と制御因子について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、実験に使用するための昆虫の採集が十分にできなかった。そのため、当初予定していた実験ができなくなり、使用額に差額が生じた。本年度実験が予定通りにできれば、問題なく使用できる。
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