研究課題/領域番号 |
20K20574
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三浦 猛 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00261339)
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研究分担者 |
三浦 智恵美 広島工業大学, 環境学部, 教授 (90518002)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 成長 / 成熟リスク / 給餌コントロール / 絶食 / 魚類養殖 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、実際のマダイ養殖漁場で絶食の養殖魚の成長に与える影響を観察した。実験は2歳魚を収容したイカダを用い、成熟の影響を受けない夏季、および成熟期である春季に行った。絶食は、夏季では8月18日から3週間(第1絶食区)、春季では産卵期前の3月30日から3週間(第2絶食区)および産卵期開始直前の4月22日から3週間(第3絶食区)に行った。各試験期間での体重および体長は、3から4週間ごとにステレオカメラにより測定した。いずれの絶食区でも対照区に比較し絶食期間成長の停滞が観察された。給餌再開後、第1および第2絶食区では対照区に比較して成長速度が著しく増加し、絶食区の体重が対照区を有意に上回った。しかし第3絶食区では、他の絶食区で認められた再給餌後の成長速度の急速な増加は認められず、対照区との間に有意な体重の違いは認められなかった。各区の実験期間での増肉係数を計算したところ、夏季に行った実験では、夏季での対照区の増肉係数が2.52であったのに対し、第1絶食区の増肉係数が2.23となり値が向上した。また、春季に行った実験においても、春季での対照区の増肉係数が3.18であったのに対し、第2絶食区では2.47、第3絶食区では、2.68と増肉係数の著しい向上が認められた。以上より、マダイ養殖では、3週間の絶食が養殖の効率化に効果を示すことが明らかとなった。しかし、その効果は、絶食を行う時期により異なった。特に産卵期に絶食を行う場合には、産卵期に入る前の3月下旬からの処理が効果的であるものと推察された。次年度は、昨年度のゼブラフィッシュを用いた絶食実験、および本年度の養殖場での実験の際に採集した肝臓組織のRNAの発現変化を調べ、絶食処理により誘導される魚類の成長促進の分子メカニズムの解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、コロナウィルス感染症により、実証試験が制限されたため、予定していた実験の全てを行うことができなかったが、今年度は感染症対策を万全に行い、昨年度行うことができなかった、実験および本年度計画した実験のほとんどを行うことができた。 しかし、生産者の都合で一部の遺伝子解析のサンプル採取ができなかったため、次年度行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のゼブラフィッシュを用いた絶食実験、および本年度の養殖場での実験の際に採集した肝臓組織のRNAの発現変化を調べ、絶食処理により誘導される魚類の成長促進の分子メカニズムの解析を行う。マダイの実証試験に関しては、本年度サンプリングできなかったサンプルの採取を行う予定である。ブリの実証試験に関しては、生産者の都合上、対照区を設定することができない可能性が高いので、分子レベルでの機能解析のみを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の計画には変更はないが、生産者の都合により、筋肉組織のサンプリングが次年度となったため、そのための遺伝子発現解析等にかかる費用を次年度に回したため、次年度使用額が生じた。次年度は、本費用を使用し、遺伝子発現解析の充実を図る。
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