研究課題/領域番号 |
20K20575
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻井 武司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40343769)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 栄養改善 / 乳児 / 貧血 / 栄養補助食品 / 市場 / 都市部 / サブサハラ・アフリカ / ガーナ |
研究実績の概要 |
ガーナのクマシ近郊のBosomtwe地区で実施した貧血情報提供実験について分析を進めた.2020年8月のベースラインと2021年2-3月のエンドライン調査の両方の受けた238組の母子が対象であり,ベースライン時の乳児の月齢は6から18ヶ月である.ベースライン時に測定した乳児の血中ヘモグロビン濃度に基づき,乳児の貧血の程度を母親に伝えたところ,乳幼児の栄養改善を目的とした看護師の訓練プログラム(SBCC program)を実施した施設を利用する母子では,貧血情報の提供により乳児の血中ヘモグロビン濃度が有意に改善した(+0.81g/dL; 95% CI: 0.33, 1.29).同プログラムを実施した施設では,貧血情報の提供がなくても血中ヘモグロビン濃度の有意な改善が見られた(+0.49g/dL; 95% CI: -0.01, 0.97).ただし,改善の程度は貧血情報の提供がある場合と比べると低い.他方,同プログラムを実施していない施設では,貧血情報を提供しても血中ヘモグロビン濃度の有意な改善は起こらなかった.また,ベースライン時とエンドライン時の比較により,母親について(1)UNICEFの国際指針(Infant Young Child Feeding (IYCF) guidelines)に関する知識の有意な向上,(2)乳幼児向け栄養補助食品(KOKO Plus)の購入率の有意な増加,(3)第一点と第二点の有意な相関が確認された.したがって,実施した看護師訓練プログラムが母親の子どもに与える食事内容の変化を引き起こし、子どもの貧血が改善した可能性を指摘できる.
2021年8月にはクマシ近郊のOffinso市で,乳幼児向け栄養補助食品(KOKO Plus)の無償サンプル提供を通じた使用経験が,同商品の需要(支払い意思額)及び実際の購買行動に与える影響について,新たな実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度においても新型コロナウイルス感染症の流行の影響でガーナへの渡航は困難であったが,比較的状況が改善した2021年7月から8月に,研究協力者の特任研究員をガーナに派遣し,Becker-DeGroot-Marschak(BDM)法による販売実験を実施し,離乳期の栄養補助食品の需要計測を実施することができた.この販売実験は日本側の研究者が現地で実施を指揮しないと実現が困難であり,新型コロナウイルス感染症の流行により現地調査が制約を受ける中で,実施できたことは,当初の計画以上に進展したと評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年に実施した貧血情報提供実験については,2022年6月の米国栄養学会で発表の予定である.その後も学会発表をしつつ,学術雑誌への投稿を行う.2021年中に実施した無償サンプル提供実験についても,学会発表および学術誌への投稿を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の調査のうち,エンドライン調査は2022年3-4月に実施したため,一部の支払いが2022年度となった.
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