研究課題/領域番号 |
20K20584
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石野 史敏 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 非常勤講師 (60159754)
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研究分担者 |
石野 知子 (金児知子) 東海大学, 医学部, 教授 (20221757)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 霊長類特異的遺伝子 / ヒト特異的遺伝子 / レトロウイルス / ERVPb1 / 遺伝子獲得 / ヒト個体発生 / ヒト系統発生 / 獲得遺伝子による進化 |
研究実績の概要 |
ヒトゲノム機能の解明は生物学の最終目標の一つであり、それによって理解される生物学的な意味でのヒトに関する情報は将来の医学の基盤となるものである。しかし、現在、その全貌解明は足踏み状態にある。申請者は、その原因の一つは「ヒトや霊類に固有の遺伝子の存在を十分に把握できていない」ことにあると考えている。本研究は、未同定のヒト・霊長類特異的遺伝子群のヒトゲノムにおける遺伝子の探索を行うことを目的としている。申請者はこれまでLTRレトロトランスポゾン由来の獲得遺伝子という通常の遺伝子の概念には含まれない哺乳類特異的遺伝子群の存在と、それらの哺乳類の個体発生システムにおける極めて重要な機能を実証してきた。 この経験からヒトゲノムの8 %を占めるLTRレトロトランスポゾン/内在性レトロウイルス由来の配列に、未同定の獲得遺伝子が多数潜んでいる可能性が高いと考え、その存在と機能を実証する方法論を開発した。昨年度、マーモセットからヒトまで保存されているENV由来の665 アミノ酸からなるタンパク質が、実際にヒトiPS細胞分化の過程で発現していることを実証し、実際、遺伝子と機能していることを確認した。このERVPb1遺伝子は、mRNAレベルではほとんど全ての臓器で発現するが、発現量が非常に低い。このため、タンパク質発現を確認するためには、蛍光タンパク質Venusを内在遺伝子のN末端に融合させたヒトiPS細胞を作成し、3胚葉分化させた時にタンパク質発現することを確認する必要があった。この方法を用いてERVPb1タンパク質を確認後に、さらに血球系細胞のマクロファージへの分化条件下で、mRNA、タンパク質ともに一過的に高発現することを明らかにした。本年度は、この内在性遺伝子のC末端にVenusを融合させた新しい細胞ラインを作成し、タンパク質産物がマクロファージ内でどのように機能に関するが解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年、発見した霊長類特異的遺伝子ERVPb1遺伝子(Matsuzawa et al. Int J Mol Med 2021)の機能解析に焦点を当てて研究を行った。この遺伝子が発生初期のマクロファージ系列で発現することから、全長のタンパク質を持ちそのC末にVenusを結合したヒトiPS細胞を作成し、ERVPb1-CV融合タンパク質の細胞内発現部位とLPSに対する反応などを明らかにすることができた。また、500種類以上の候補遺伝子から、霊長類の中でもヒトにのみ存在するヒト特異的遺伝子を数十このレベルまで絞り込むことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今回、正常なタンパク質をもつERVPb1-CVの細胞ラインを樹立でき、これと以前、作成したタンパク質のほとんどを欠失した同定したERVPb1-NVの細胞ラインの両方を揃えることができたため、このERVPb1遺伝子の機能をKO実験により明らかにする準備が整った。また、このヒトiPS細胞を利用する方法を用いて、他のヒト特異的遺伝子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、予定していたERVPb1遺伝子の機能解析(ERVPb1-CVとERVPb1-NV(KOライン)の比較実験は、共通実験機器である共焦点レーザー蛍光顕微鏡の予約が混み合って十分取れなかったため、その一部が翌年度に持ち越しになったため。今年度に、この実験は継続して行う予定である。
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