• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

核内脂質代謝系は核内受容体のリガンドのin situ合成場として機能するか?

研究課題

研究課題/領域番号 20K20592
研究機関東北大学

研究代表者

小椋 利彦  東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2024-03-31
キーワード核内脂質 / エネルギー代謝 / 核内受容体 / 質量分析
研究実績の概要

まず、C2C12細胞を細胞質と核に分画し、それぞれからBligh-Dyrer法を用いて脂質成分を抽出し、TLC(Thin Layer Chromatography)で解析した。その結果、核と細胞質で、TLC 上、脂質組成に明確な差があった。そこで、二つの細胞分画の脂質成分を質量分析にかけ、網羅的に含まれる脂質成分を同定した。その結果、核内受容体のリガンドになると報告されている複数の脂質成分が、主に核に存在し、細胞質には低濃度しか含まれないことが秋若となった。詳細な質量分析を行い、Phosphatidylcholine (PC)、Phosphatidylethanolamine (PE)、lysoPC、lysoPE、Sphingomyelin、Ceramide etc まで拡大し、核脂質成分を同定し、ある程度、リスト化、データベース化することができた。
また、我々の研究室では、C2C12細胞に伸展などの力学刺激を加えることで骨格筋細胞に分化誘導することが可能となっているが、この分化過程で複数の脂質結合蛋白、脂質代謝調節因子が exosome として細胞外に放出されることもわかった。この因子は、細胞核にも存在することが報告されている。興味深いことに、その中の一つは、Sphingolipid 代謝に関連するもので、この因子はエネエルギー代謝を調節する核内受容体の転写活性を大きく変えることが明らかとなった。このことは、Sphingolipid に属する脂質が核内にも存在すると同時に、細胞外に放出され、exercise hormone として離れた組織のエネルギー代謝を制御していることを示唆する。
以上、初年度の実績として、核内・細胞質内脂質のデータベース化、exercise hormone として機能し得るsphingolipid 代謝関連因子の同定の二つが大きな進展として挙げられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

核内脂質、細胞内脂質について、正確な成分分析ができてデータベース化することができた。これは、今後の研究の重要なレファレンスとして機能すると思われる。また、C2C12細胞が、力学刺激誘導骨格筋分化の際に、核内に含まれる脂質代謝に関する因子を exosome として細胞外に放出することが明らかとなり、これは、いわゆる exercise hormone を考える上で、極めて重要な知見になると予想される。

今後の研究の推進方策

次年度は、集中的に、C2C12細胞が骨格筋分化に伴って細胞外に放出する脂質代謝関連因子の機能解析を行す。まず、この因子が制御するのがどの脂質代謝系なのか、また、エネルギー代謝関連核内受容体のどの受容体をどのように活性化・不活性化するのか、分子生物学的な手法から解析する。この解析は、核内受容体を制御する脂質種の同定、核内受容体のリガンド結合ドメインを介する制御なのか、細胞外放出のメカニズムは何か、の3点に注目して集中的に行う。また、C2C12細胞へ力学刺激を加えた際に細胞質から核内にシャトルインする複数の脂質代謝酵素をすでに同定しているが、これとの関連を明らかにする。
核内受容体のリガンド同定について、研究計画書に記述した手法が確立できたので、これも遅滞なく進める。

次年度使用額が生じた理由

脂質質量分析に関して、試験研究として実質無償で行うことができたので、この分を翌年、さらに詳細な分析に回すことが可能となった。また、当初予定していた人件費(技術補佐員)が採用できなくなったこと、新型コロナの流行によって研究に制限がかかって進展が遅れた部分があることが理由として挙げられる。この人件費については、翌年に繰り越すこととした。Exercise hormone 候補となる脂質成分の同定、分離、合成に多額の出費が予測され、また新型コロナで遅れた部分を早急に補うため、繰越たいと考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Structural insights into vesicle amine transport-1 (VAT-1) as a member of the NADPH-dependent quinone oxidoreductase family2021

    • 著者名/発表者名
      Kim Sun-Yong、Mori Tomoyuki、Chek Min Fey、Furuya Shunji、Matsumoto Ken、Yajima Taisei、Ogura Toshihiko、Hakoshima Toshio
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: on line

    • DOI

      10.1038/s41598-021-81409-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Findings from recent studies by the Japan Aerospace Exploration Agency examining musculoskeletal atrophy in space and on Earth2020

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Higashitani et al
    • 雑誌名

      npj microgravity

      巻: 1 ページ: in press

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi