研究課題
これまでの私達の研究は、2次元の単層培養下でがん細胞は持続的に分裂増殖を継続し幹細胞に依存していないが、3次元のスフェア培養やin vivoの腫瘍形成条件では、がん細胞にも分裂寿命があり、幹細胞だけが間欠的だが長期間の寿命を持ち、幹細胞誘導による幹細胞の増加に伴って総細胞数が増加することが示唆されている。そこで、この細胞増殖動態を可視化して確認することを計画し、今年度は、1.令和2年度から継続して1.生物発光共鳴エネルギー移行を活用した幹細胞性と細胞増殖性のリアルタイム多色イメージングシステムの構築、2.がん細胞増殖動態リアルタイム解析システムの構築を行い、内在性の幹細胞遺伝子の発現とレポーターの発現との比較についての検討を行った。細胞としては、乳癌細胞株Hs578T, BT474を用い、幹細胞遺伝子としてSox2, OCT4, NANOG、増殖マーカーとしてKi67を用いた。これとともに、特殊環状ペプチドを用いたがん幹細胞のイメージングを行った。途中、レポーターの安定発現細胞株の樹立が困難であったため、レポーターの再構築を行なった。また、TMEPAIやGPNMBなど幹細胞性誘導能をもつ遺伝子のノックアウトによってスフェア形性能や腫瘍形性能が失われることを細胞増殖動態の変化の解析から検討し、TMEPAIやGPNMBは幹細胞性誘導活性によって腫瘍形性能を誘導するという仮説の検証を行った。TMEPAIはNEDD4-2の機能を活性化し、PHLPP1の分解を促進してAKT S473のリン酸化を亢進させて幹細胞誘導を促進することを示した。2.特殊環状ペプチドを用いたイメージングツールを用いて、事前に遺伝子導入を行なっていない乳癌のオルガノイド培養のライブイメージングを行った。
3: やや遅れている
生物発光共鳴エネルギー移行を活用した幹細胞性と細胞増殖性のリアルタイム多色イメージング用レポーターの発現の不安定性があり、発現ベクターはプラスミドに加え、ウイルスベクターも作製して、安定な発現細胞の構築を継続しつつ、他のペプチド等による観察実験を行なった。TMEPAIの作用とGPNMBの作用については順調に解析が進んでおり、特にTMEPAIについては、ノックアウトした乳癌細胞が腫瘍形成能を失うことを確認するとともに、幹細胞誘導と腫瘍形成性増殖との関連を示すことができた。オルガノイド培養においても、細胞表面へのGPNMBの発現と幹細胞誘導の関係を示すことを可能にした。
担当者を増員して、プラスミド並びにウイルスベクターを用いたレポーター発現細胞を複数の宿主がん細胞に導入して、安定なレポーター発現細胞を樹立し、今年度中にがん細胞増殖動態リアルタイム解析ソフトウエアの開発を開始する。オルガノイド培養においても、in vivoのPDXを樹立して、幹細胞性と腫瘍形成能の関係を示す。GPNMBの作用機構についても、新たな機能ドメインの解析から、新規機能を示す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
Molecular Oncology
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