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2021 年度 実施状況報告書

DNA損傷時のエピゲノム修復における長鎖非翻訳RNAの役割と発がんへの関与

研究課題

研究課題/領域番号 20K20598
研究機関名古屋大学

研究代表者

近藤 豊  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00419897)

研究分担者 飯島 健太  浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 研究技術職員 (20565626)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワード非翻訳RNA / エピゲノム / DNA損傷 / 相同組換え修復
研究実績の概要

本研究では、DNA損傷時のエピゲノム安定性の維持・調節機構について、長鎖非翻訳RNAの機能に着目し明らかにすることを目的とする。ゲノム、およびエピゲノム安定性の維持は細胞の生存や個体の発生において極めて重要であり、その破綻はがん等の疾患の原因となる。特にDNA損傷時にエピゲノム情報が失われたり傷ついたりした際に、どのようにオリジナルのエピゲノム修飾が修復・維持されるのかについては解明が進んでいない。本研究では、DNA損傷時のエピゲノム安定性の維持・調節機構について、長鎖非翻訳RNA(lncRNA)の機能に着目し明らかにすることを目的とする。とりわけ、これまで解析を進めてきたTUG1を含めDNA損傷関連lncRNAに注目する。エピゲノム不安定性は、がん細胞の発生および可塑性の獲得のための分子基盤として重要な要素のひとつであり、その誘導機序を解明することは、がんの生物学的理解のみならず、新たな予防・治療標的を見出す革新的アプローチにつながる。本研究ではDNA損傷によってDNAメチル化情報やヒストンタンパク質の脱離した領域におけるエピゲノム修復機構として、lncRNAを介する機構を提起し、エピゲノム安定性に関しての解明を試みる。本年度は、① 昨年度確立したDNA損傷誘導系の評価、② DNA損傷修復に関連する新たなlncRNAの同定、③ DNA損傷に関与することを明らかにしたTUG1についての機序の解明、を実施した。研究方法の変更を加えつつおおむね順調に進展している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の以下の研究を行い、おおむね順調に進展している。
① 昨年度までに修復部位のlncRNAおよびエピゲノム修飾因子の同定とエピゲノム修復機構の解明に用いるU2OS 2-6-3細胞(LacO反復配列安定導入細胞株)へ、Cas9 nucleaseとLacO配列を標的とするsgRNAを導入し、LacO領域におけるCas9タンパク質の集積、およびDNA損傷誘導を確認している。一方で系が必ずしも安定しないことから引き続きアッセイ系の評価を続けている。② ①で確立しつつある系を有効に利用するため、DNA損傷を誘導する新たなlncRNAの同定を目指して、DNA損傷の誘導に用いられるカンプトテシン(CPT)やヒドロキシウレア(HU)で細胞を処理し、再現性高く発現が亢進するlncRNAを同定した。③ DNA損傷に関与することを明らかにしたTUG1についての機序の解明を実施した。④ 同定したlncRNAに結合するタンパク質の同定法(CRISPR-assisted RNA-protein interaction detection method, CAPID)法を樹立した。

今後の研究の推進方策

樹立した系を用いて、lncRNA によるDNA損傷修復の機序の解明、およびその際に誘導されるエピゲノムの動態変化について引き続き解析を進める。1) DNA損傷修復を起点とするエピゲノム修飾変化の解析:遺伝子領域部位特異的にDNA損傷を誘導し、その修復時のエピゲノム修飾変化について解析を行う。2) 修復部位のlncRNAの同定とエピゲノム修復機構の解明:DNA損傷の誘導をHUおよびCPTで行い発現の上昇するlncRNAを同定する。またU2OS 2-6-3細胞(LacO反復配列安定導入細胞株)の系を用いて損傷部位のlncRNAおよびエピゲノム修飾因子を同定し、DNA損傷修復時のエピゲノム修飾機序についての詳細を明らかにする。3) エピゲノム安定性低下による発がんへの関与:同定したlncRNAやエピゲノム修復関連タンパク質をがん細胞で解析し、発がんに与える影響を解析する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染症により試薬の供給に遅れが生じたため、DNA損傷部位におけるエピゲノム修飾、およびDNA損傷部位へ集積するlncRNAを網羅的に解析する近接依存性ビオチン標識法の1つであるAPEX(Ascorbate peroxidase)の構築に遅れが生じた。その代用案として、HUやCPT等のDNA損傷を誘導する薬剤添加で発現が上昇するRNAの同定も実施することにした。網羅的解析を行う準備等で次年度使用額が必要となった。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Cancer-Specific Targeting of Taurine-Upregulated Gene 1 Enhances the Effects of Chemotherapy in Pancreatic Cancer.2021

    • 著者名/発表者名
      Tasaki Y, Suzuki M, Katsushima K, Shinjo K, Iijima K, Murofushi Y, Naiki-Ito A, Hayashi K, Qiu C, Takahashi A, Tanaka Y, Kawaguchi T, Sugawara M, Kataoka T, Naito M, Miyata K, Kataoka K, Noda T, Gao W, Kataoka H, Takahashi S, Kimura K, Kondo Y.
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 81 ページ: 1654~1666

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-20-3021

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Newly established patient-derived organoid model of intracranial meningioma.2021

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki S, Ohka F, Hirano M, Shiraki Y, Motomura K, Tanahashi K, Tsujiuchi T, Motomura A, Aoki K, Shinjo K, Murofushi Y, Kitano Y, Maeda S, Kato A, Shimizu H, Yamaguchi J, Adilijiang A, Wakabayashi T, Saito R, Enomoto A, Kondo Y, Natsume A.
    • 雑誌名

      Neuro-Oncology

      巻: 23 ページ: 1936~1948

    • DOI

      10.1093/neuonc/noab155

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ヒストンメチル化制御阻害剤.2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木美穂, 近藤 豊.
    • 雑誌名

      遺伝子医学MOOK(36) エピゲノムで新たな解明が進む「先天性疾患」

      巻: 36 ページ: 204-209

  • [学会発表] 「核酸創薬」TUG1に対する核酸治療薬の開発を目指して.2022

    • 著者名/発表者名
      近藤 豊.
    • 学会等名
      第17回日本がん分子標的治療学会TRワークショップ
  • [学会発表] 長鎖非翻訳RNAによるがん細胞特異的Rループ解消機構.2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 美穂, 近藤 豊.
    • 学会等名
      2021年度先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会
  • [学会発表] 「ゲノム・エピゲノム」 新規LSD1阻害剤の開発.2021

    • 著者名/発表者名
      新城恵子, 近藤 豊.
    • 学会等名
      第25回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] 細胞のゲノム調節分子としての長鎖非翻訳RNA.2021

    • 著者名/発表者名
      近藤 豊.
    • 学会等名
      生化学会北陸支部シンポジウム
  • [学会発表] がん細胞の維持に関わる長鎖非翻訳RNAの解析と治療への応用.2021

    • 著者名/発表者名
      近藤 豊.
    • 学会等名
      第17回日本病理学会カンファレンス
  • [学会発表] 「DNA複製・細胞周期・ゲノム不安定性」 長鎖非翻訳RNA TUG1はR-loopを解消しがん細胞の増殖を促進する.2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木美穂, 飯島健太, 新城恵子, 近藤 豊.
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 「浸潤・転移(2)」 脳転移におけるグリアネットワークの破綻.2021

    • 著者名/発表者名
      石橋公二朗, 新城恵子, 近藤 豊, 平田英周.
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 「エピジェネティクス(1)」 新規LSD 1阻害剤による脳腫瘍治療効果とその機序の解明.2021

    • 著者名/発表者名
      新城恵子, 室伏善照, 鈴木美穂, 近藤 豊.
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] がん細胞のDNA複製ストレス解消に関わる長鎖非翻訳RNA.2021

    • 著者名/発表者名
      近藤 豊.
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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